2-砂町の乙女
光から抜け出した先。
セスシナングは人並みの真ん中に立っていた。
照りつける太陽で暑い。
それにどうやら空気が乾燥している。
足元は砂が風で待っているようだ。
セスシナングがいる場所はどうやら砂漠の街の通りの一角らしい。
異国風の身なりをした人々が行き交っている。
殆どは人間であるが、セスシナングと同族の姿もごく僅かではあるが存在する。
少し後ろを振り向けば、これまた異国風の立派な宮殿があった。
どうやらここは城下町なのだろう。
であれば、人通りも多く、また異種族の姿が見受けられるのもありうるか。
実際に様々な人がセスシナングの傍を通り過ぎていくのだが。
共に本に名前を記した者たちの姿はそこにはない。
別の場所に飛ばされてしまったのだろうか。
だが、いつまでも通りの中心で周囲を見渡しているわけにはいかないだろう。
リルドラケンである以上、女性であってもセスシナングは幅をとり、通行の邪魔となる。
――ドン。
こうして誰かがついぶつかってしまうのも仕方がないかもしれない。
どうやら背中のあたりにぶつかったようだ。
振り向いてみれば、黒い衣で体の大部分を覆った女性のようだ。
「すみません、急いでいたもので」
彼女は素早く一礼をした後、そのまま人並みの向こうへ消えていく。
その所作は急いでいるからか簡略であったが、どことなく振る舞いからは気品を感じられただろう。
ふと、セスシナングが足元を見ると。
そこには青い宝石の埋め込まれた首飾りが落ちていた。
さっきの彼女が落としたものだろうか。
彼女とぶつかる前に、そこには何も落ちていなかったような気がする。
黒い服をまとった女性の姿はもうない。
彼女はどうやら路地裏の方へ姿を消したようだ。
他にもこの道は色々な場所へ繋がっている。
例えば、城の方へと。
他にも、街の入口の方へと。
セスシナングが向かうべきはどこだろうか。
――そういえば、セスシナングの手中にはいつの間にか栞のようなものがあった。
桃色のその栞には文字が書き込まれている。
記憶からは文字がどの言語かは思い当たらない。
だが、セスシナングはその内容を把握できた。
『物語の登場人物には各々の役割がある。
桃の栞を手にした者よ。
世界の中で愛の物語を紡げ......』
これが、セスシナングに与えられた役割なのだろうか。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
こちらセスシナングのカテゴリです。
しばらくはこちらのカテゴリにご投稿ください。
セスシナングは砂漠の城下町の大通りにいます。
セスシナングはSQの証として【桃色の栞】を手にします。
【分類:道具】に【桃色の栞】を登録しておきます。
セスシナングは黒い布で身を隠した女性とぶつかります。
彼女が去った後、地面には首飾りが落ちているようです。
拾おうと思えば、拾うことができます。
セスシナングは次の行動を選択してください。
具体的なものは以下の4つです。
・女性の消えた方へ向かってみる
・城の方へ向かってみる
・街の入口へ向かってみる
・大通りに留まってみる
他にも何かございましたらお好きにどうぞ!
このカテゴリに記事を投稿する際は、
カテゴリ『2-砂町の乙女』にチェックを入れて投稿してください。
白い光に包まれて、気が付くと私は――
「あら、あら」
ここはどこでしょうか?
グレースさん、アメリアさん、ルークさんの姿は見えません。
皆さんどこに行ったのでしょうか?
とても熱いですが、夏のルキスラのような湿った暑さではなく、
からりとした乾燥した暑さです。
まるで砂漠みたいですね。
足にも、さらさらとした砂が絡みついてきます。
周りを見回すと、ゆったりとした服装の方々が行き交っています。
確かああいう服は砂漠地帯に住む人々が好んで着る衣装だと私は記憶しています。
ということは。
みたい、ではなく本当に砂漠にいるようですね。
人も多いという事は街の中なのでしょうか。
私、砂漠に来るのは初めてです。
リーゼンにも、ザルツにもこういった場所はありませんでした。
足に砂が絡みつく感覚も、照りつける太陽も、遠くに見える宮殿もすべてが新鮮です。
ここには他にどういう物があるのかしら。
砂漠にはころころ転がる不思議な草があるって聞いたこともあります。 また、背中にこぶのついた運搬用の動物もいるとか。
一度見てみたいものです。
そうだわ、折角だから妖精さん達も出してあげようかしら。
そんなことを考えている間にも、往来する人々は私を邪魔そうに避けて行きます。
あら、流石に道の真中で立ち往生しているのは迷惑でしたね。
尻尾を踏まれる前に目立たない場所に行きましょう。
―ドン。
もうちょっと早くどいているべきでした。
私の背中に誰かがぶつかってしまったようです。
幸い尻尾は踏まれていません。
振り返ると、そこには黒い布を纏った女性がいました。
>「すみません、急いでいたもので」
「こちらこそ道の真中でぼうっとしてしまってすみません」
本当に急いでいたようで、簡単なお辞儀でしたが、
何となく気品を感じる振る舞いでした。
彼女はそのまま往来の中へと消えていきました。
「...あら?」
足元に何か落ちています。さっきまでは何もなかったはずです。
今の女性が落としていってしまったのでしょうか。
拾い上げてみると、それは首飾りみたいでした。
青い宝石が埋め込まれた、高価そうな物です。
彼女が消えた方向を見ても、黒い服は見えません。
路地裏の方へと向かったのでしょうか。
早く彼女を探しに行かなければいけませんね。
そしてもう一つ、手に何かを持っていることに気が付きました。
これは私も拾った記憶がありません。
桃色の、本に挟む栞のような物です。
見たこともない文字が書き込まれていますが、
何故か私はその内容を理解することができました。
>『物語の登場人物には各々の役割がある。
> 桃の栞を手にした者よ。
> 世界の中で愛の物語を紡げ......』
「......」
そういえばここは絵本の世界でしたね。
決して、初めて見る砂漠に浮かれて忘れていた訳ではありませんよ。
愛、愛ですか。
一言に愛と言っても沢山の種類があります。
男女間のそれを始め、隣人愛、親子愛、親愛。
全てが尊く、美しい感情です。
ここで語られているのは、男女間の愛、恋愛なのでしょう。
とある唄には愛とは悔やまないこと、躊躇わないことと謳われています。
迷いなく悔いのない選択をしていけば、必ず皆が望む愛へと辿り着ける。そう信じましょう。
まずはあの女性に首飾りを届けましょう。
これも親切という名の愛です。
――――――――――――――――――――――――――
◯PL
宝物鑑定しようか迷いましたが、
10分も時間かけて鑑定するよりもすぐに届けに行くほうがセスらしいので、
ささっと女性が消えた方に向かいます。
あとやっとセッション用データできました。
改訂版妖精使いのややこしさはすごいですね。
青い宝石の埋め込まれた首飾りを拾ったセスシナングは。
落とし主であろう女性を追いかけるために路地裏の方へと抜けた。
大通りを離れれば離れるほど。
やつれたような姿の住人の数が増えてくる。
彼らの服はあまり良いものではなさそうで。
大通りを歩いていた人々と比べればどうにも見劣りするか。
おそらく、ここに居る者と大通りを悠々と歩くような者の間には格差があるのだろう。
だとすれば、先ほどの女性は何故こんな所へ向かったのだろうか。
彼女はどちらかというと恵まれた側であるように見受けられたが。
* * *
セスシナングが路地裏を歩いていると。
声が......聞こえた。
複数の男と一人の女性の声だ。
「おいおい、無視しないでくれよ。
俺たち金もないし暇でしょうがないんだよね」
「この布、結構いい生地使ってるんじゃね?
いいなあ......そっか、金持ちなんだ。
金持ちだったら可哀想な俺らに恵んでくれよ、な?」
四人ほどの若い男が下卑た笑顔を浮かべつつ。
一人の女性を取り囲んでいる。
囲まれているのはどうやら、先ほどセスシナングにぶつかった女性のようだ。
「......汚い手で、触らないで」
彼女の纏う布を撫で回していた男の手を、はたく。
叩かれた男は顔を赤く染め上げて、女性を睨んだ。
「てめぇ、舐めてんじゃねえぞ?
自分がどういう状況に置かれてるのか、わかってるのか......ああ?」
「今更こんなとこに来るんじゃなかったって後悔するんじゃねえぞ?
俺らを満足させるまで放さねえからな」
一人の男がぎゅっと女性の腕をつかみ。
「痛......放しなさい!」
女性が声を上げる。
彼女を囲んでいる男たちはそれなりに若くエネルギーが有り余っているのだろう。
それなりに背丈も高く、あの女性の身では抵抗するのもこんなんだろうか。
だが、彼らは戦う技術を身につけているわけでもない。
セスシナングであれば、止められるかもしれない。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
こちらセスシナングのルート進行です。
大通りを外れると揉め事が起きていました。
セスシナングは次の行動を選択してください。
具体的なものは以下の2つです。
・女性を助けに向かう
・女性のことを無視する
他にも何かございましたらお好きにどうぞ!
私は表通りを抜けて、路地の裏の方へと向かいました。
路地の裏というのは、行き場のない方々の集まる場所。
官憲の目も届きにくいため、治安が悪いと聞いております。
本の世界でもそれは同じのようです。いえ、本の世界だからでしょうか。
では、先程の女性はこちらに何の用があったのでしょうか。
とてもここに縁のあるような方には見えませんでしたが...
念の為に『門』の場所を確認しながら歩いていると、
声が聞こえてきました。
>「おいおい、無視しないでくれよ。
> 俺たち金もないし暇でしょうがないんだよね」>「この布、結構いい生地使ってるんじゃね?
> いいなあ......そっか、金持ちなんだ。
> 金持ちだったら可哀想な俺らに恵んでくれよ、な?」
どうやら、穏やかじゃない事態のようですね。
奥に近づくにつれ、声の主達がはっきりと見えてきました。
先程の女性が男性4人に囲まれています。
>「......汚い手で、触らないで」>「てめぇ、舐めてんじゃねえぞ?
> 自分がどういう状況に置かれてるのか、わかってるのか......ああ?」>「今更こんなとこに来るんじゃなかったって後悔するんじゃねえぞ?
> 俺らを満足させるまで放さねえからな」>「痛......放しなさい!」
かたかた、と『門』達が少し震えた気がしました。
駄目ですよ。荒事は本当に最後の手段です。誰も傷付けてはいけません。
正面から堂々と立ち向かうのが得策とは、今の私にはどうしても思えませんでした。
ではどうすればよろしいのでしょうか?
その時、一つだけ作戦が思い浮かびました。
あまりにも突拍子もない、無謀とも言える物です。
しかし、私の本能がそれを実行するべきだと主張するのです。
気がはやっている妖精達の影響でしょうか。
考えている時間は余り無いようです。行きます。
ああ、ままよ。アステリアよ、私に加護を。
小さく祈りを捧げて、私は諍いの中へと飛び込んでいきました。
「お嬢様、こんな所にいらっしゃったのですか!」
「外出の際は私から離れぬように、と旦那様より言付けられているはずです。
お嬢様に何かあったら、私は尻尾と首を斬られてしまいます」
そう、名前も分からない女性にまくし立てます。
私はこの女性の護衛。はぐれたお嬢様を探しに来た屈強なリルドラケンの護衛です。
そういう設定なのです、と女性に目で訴えます。伝わってるかしら。
それから、男性達の方を一瞥し。
真っ赤な目を見開いて、睨みつけます。
「それで、あなた方はお嬢様に何の御用があるのですか?
もしも、お嬢様に危害を加えようとしていたのでしたら...」
分かりますよね?
その部分はあえて口に出しませんでした。
本当の所を申し上げますと、とても、緊張しています。
――――――――――――――――――――――
◯PL
セスシナングは女性の護衛なんですよーと芝居を打って女性を助けます。
普通に正面突破でも大丈夫そうでしたが、面白そうなのでこっちでいきます。
芝居が失敗したなら風の翼を使ってその場を離脱する方向で考えています。
セスシナングの前で行われるやり取り。
彼女は決して黙って見過ごすことを是とはしなかった。
セスシナングの選択した行動、それは......。
>「お嬢様、こんな所にいらっしゃったのですか!」
>「外出の際は私から離れぬように、と旦那様より言付けられているはずです。
> お嬢様に何かあったら、私は尻尾と首を斬られてしまいます」
セスシナングは自分が女性の従者であると偽ったのだ。
女性に対して目でアピールすると、彼女はその真意を悟ったようだ。
>「それで、あなた方はお嬢様に何の御用があるのですか?
> もしも、お嬢様に危害を加えようとしていたのでしたら...」
そのままセスシナングは周囲を取り囲む男たちに睨みをきかせる。
セスシナングは女性であり、本来は物理的な荒事が得意なタイプではないのだが。
竜人の姿は戦を知らぬちょっとした悪党共を怯ませるには十分すぎた。
「くっそ、せっかく上物そうだったのに」
「次は絶対うまくやるからな。
覚えてやがれ!」
そう言って男どもは足早に向こうの角へと姿を消していった。
残されたのはセスシナングと女性が一人である。
「ありがとう......私の護衛さん?
さっき大通りでぶつかってしまった方よね。
何度もご迷惑おかけして申し訳ございません」
女性はセスシナングを見上げて礼を言う。
「今度お礼をさせて欲しいからあなたの名前を聞いてもいいかしら?
――いえ、その前に私の方から名乗るのが礼儀よね」
そう話すと彼女は顔を隠す布とヴェールを外す。
すると彼女の美しい黒髪が、青い色の瞳が、褐色の肌をした顔が露わになる。
「私はアティファ。
この国の王女よ。
改めて、私に貴女の名前を聞かせてくれるかしら?」
砂漠に咲く花のように美しい彼女の名前はアティファ。
この国の姫だという。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
こちらセスシナングのルート進行です。
セスシナングの行動で男たちは一目散に逃げていきました。
【NPC:女性】に【アティファ】を登録しておきます。
アティファがセスシナングにとってのメインNPCとなります。
とりあえずまずは名前を聞かれているようです。
他にも彼女に何か聞いてみたり、
ついでに返すものがあれば返してみたり、お好きにどうぞ。
>「くっそ、せっかく上物そうだったのに」
>「次は絶対うまくやるからな。
> 覚えてやがれ!」
幸いにも、私の判断はいい方向に向かったみたいです。
彼等はとてもわかり易い捨て台詞と共に逃げて行きました。
ふう。もしも襲いかかって来たらどうしようかと思いました。
もしも私が人間だったなら、体中冷や汗だらけだった事でしょう。
残された女性と向き合います。
やはり、先程の女性です。
>「ありがとう......私の護衛さん?
> さっき大通りでぶつかってしまった方よね。
> 何度もご迷惑おかけして申し訳ございません」
面と向かって護衛と言われてしまいますと、先程の事を思い出してちょっと恥ずかしくなります。
護衛らしく振る舞えていたかしら。
「いえいえ、お役に立てて嬉しいです」
>「今度お礼をさせて欲しいからあなたの名前を聞いてもいいかしら?
> ――いえ、その前に私の方から名乗るのが礼儀よね」
女性が顔を覆っていた布とヴェールを外すと、先程はよく見えなかった顔がはっきり見えました。
黒い髪と青い海のような色の瞳が褐色の肌に映えています。
リルドラケンの私から見てもとても美しい方、だと思いました。
>「私はアティファ。
> この国の王女よ。
> 改めて、私に貴女の名前を聞かせてくれるかしら?」
あら、王女様だったのですか。
やんごとなき身分のお方だとは思っていたのですが、
私の思っていた以上です。
しかし、どうしてそのような方がこんな所にいらっしゃるのでしょうか。
「王女様でしたか、これは失礼致しました。
私の名前はセスシナングと申します。
祖の言葉で『揺れる木の葉』を意味するとか」
跪き、胸に手を当てながら答えます。
この国の民ではない私にこの国(それとも絵本世界でしょうか)特有の儀礼は分かりません。
無礼がなければよろしいのですが。
そうそう、返さなければいけないものがあったのでした。
立ち上がり、懐を探ります。
「ところで、こちらは貴方のものではありませんか?
あなたとぶつかってしまった後、そばに落ちていたのですが...」
私が取り出したのは、もちろん先程拾った首飾りです。
詳しく調べたわけではなく、少し眺めただけですが高価だというのは分かります。
特に王族の方が身に付ける物ともなればその価値は計り知れないのではないでしょうか。
「それにしても、アティファ様は何故このような場所にいらしたのですか?
貴方のような方が訪れるには危険な場所だと思いますが...」
私は王族の暮らしに詳しい訳ではありませんが、
王族が城の外に出る際は護衛の騎士や召使が随伴するはずです。
それなのに彼女は一人で身を隠すようにして、裏路地へと向かおうとしていました。
「先程のような方々にまた出会ってしまう可能性もあります。
宜しかったら、このまま『護衛』を続けましょうか?」
恐らく、アティファ様は一人でも目的の場所に向かうつもりなのでしょう。
先程の方々が戻ってこないとも限りません。
私は彼女に付いて行くべきでしょう。
恐らくはこの物語もそれを望んでいるはずです。
――――――――――――
◯PL
自己紹介をして、首飾りを返して、
何処かに用があるならご一緒しますかーと本当の護衛を申し出ます。
>「王女様でしたか、これは失礼致しました。
> 私の名前はセスシナングと申します。
> 祖の言葉で『揺れる木の葉』を意味するとか」
セスシナングはその名前を姫に告げつつ。
ゆっくりと跪いてみせる。
「セスシナング......揺れる木の葉、か。
優しげで良い名前ね。
ふふ、それと......そんなポーズは必要ないわ。
誰か通りかかったら邪魔になってしまうでしょ?」
アティファはそうセスシナングに立ち上がるように言った。
セスシナングは立ち上がりながら。
ふと最初の目的に気づく。
>「ところで、こちらは貴方のものではありませんか?
> あなたとぶつかってしまった後、そばに落ちていたのですが...」
それは大通りで拾った青石の首飾り。
「まあ、気づかなかったわ......それは彼への贈り物なの。
よかった、ありがとう。
あなたにはお礼を言ってばかりね」
セスシナングの差し出した首飾りを彼女は受け取る。
どうやら彼女自身の持ち物ではなく。
誰か、それも男性への贈り物だという。
>「それにしても、アティファ様は何故このような場所にいらしたのですか?
> 貴方のような方が訪れるには危険な場所だと思いますが...」
>「先程のような方々にまた出会ってしまう可能性もあります。
> 宜しかったら、このまま『護衛』を続けましょうか?」
青石の首飾りを返し終えると。
セスシナングは疑問を投げかけてみた。
何故王女たる身分のアティファが一人でこんな路地裏を歩いているのか、と。
「それはね、簡単な話よ。
城の中にいると退屈なの。
満ち足りているけれど、ただそれだけ。
だから時々私は街にこっそり出かけていたわ。
でも、流石にこんな路地裏にひとりで来るつもりは最初はなかった。
ただある時迷い込んで、ここで出会ったのよ――彼に」
もともとアティファは城での生活に退屈感を覚えていたらしい。
だから、時々城下町を一人で散策していたが。
ふと路地裏に迷い込んだとき、ある男性に出会ったのだという。
「彼は、確かに貧しく、何の力も持っていなかったわ。
でも彼は自由に生きていた。
一人でも生きようとしていた。
真っ直ぐに、誰かに敷かれた道を行かず、自分の道を拓きながら。
そんな彼の自由さ、強さに私は憧れたのよ」
――憧れた。
そこには文字としてのそれ以上の意味をセスシナングは感じ取れただろうか。
「――アラジン」
数歩足を進ませながら話していた彼女は振り返り、ある名前を紡ぐ。
「それが彼の名前なの。
どうせならうちの近衛兵長ももっと彼を見習ってくれればいいのだけど。
いつもガミガミうるさくて堅すぎて嫌になるわ。
それに比べてセスシナングはマシね。
でも、あまりかしこまった態度ばかり取られると困っちゃうわ。
私が嫌というより、そんな態度だと私が王女だって他の人に気づかれちゃう。
でも、ちゃんと心掛けてくれるなら、あなたに護衛頼もうかしら?」
どうやらアラジンとは、アティファの出会った者の名前であったようだ。
それに、アティファの傍には近衛兵長なる人物がいるらしい。
彼はおそらくアティファの護衛であろうから。
正直なところ、今のような状況には頭を痛めているかもしれない。
「アラジンの家は、もう少し曲がって行ったところよ。
ちっちゃくてぼろぼろな家だけどね、ふふ」
けれどアティファは気にせず行く。
セスシナングは彼女の護衛を務めるならついていくといいだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
こちらセスシナングのルート進行です。
とりあえず会話メインのターンが続くかな。
セスシナングはアティファについて護衛になれます。
ついて行く場合このままアラジンの家のそばまで向かうことでしょう。
>「まあ、気づかなかったわ......それは彼への贈り物なの。
> よかった、ありがとう。
> あなたにはお礼を言ってばかりね」
まあ、彼への贈り物ですか。ふふふ。
それはとても興味深いですね。
この桃色の栞の導きではなく、私が耳年増なだけかもしれません。
アティファ様――さんは彼について話します。
>「それはね、簡単な話よ。
> 城の中にいると退屈なの。
> 満ち足りているけれど、ただそれだけ。
> だから時々私は街にこっそり出かけていたわ。
> でも、流石にこんな路地裏にひとりで来るつもりは最初はなかった。
> ただある時迷い込んで、ここで出会ったのよ――彼に」>「彼は、確かに貧しく、何の力も持っていなかったわ。
> でも彼は自由に生きていた。
> 一人でも生きようとしていた。
> 真っ直ぐに、誰かに敷かれた道を行かず、自分の道を拓きながら。
> そんな彼の自由さ、強さに私は憧れたのよ」
人は、自分が持っていない物を持つ者に憧れるものだと思います。
私の白い鱗と大きな体を羨ましいと言う方は時々いますが、
私としては、人間の食べ物をゆっくりと食べられる小さな口、
動くのに気を遣う必要のない小さな体に憧れます。
アティファさんは自分とは真逆の、その青年に惹かれたのですね。
>「――アラジン」
それが彼の名前みたいです。
アラジン、最近どこかで聞いたような...?
>「それが彼の名前なの。
> どうせならうちの近衛兵長ももっと彼を見習ってくれればいいのだけど。
> いつもガミガミうるさくて堅すぎて嫌になるわ。
> それに比べてセスシナングはマシね。
> でも、あまりかしこまった態度ばかり取られると困っちゃうわ。
> 私が嫌というより、そんな態度だと私が王女だって他の人に気づかれちゃう。
> でも、ちゃんと心掛けてくれるなら、あなたに護衛頼もうかしら?」
「ふふ、気を付けます。アティファさん。
私もかつては人に仕える身だったので、つい体が勝手に反応してしまうのです。
そうそう。私の事はセス、で大丈夫ですよ」
竜語から名前を付けるのが、私の生まれた村の風習だったのですが、
どうにも他種族には発音しにくいらしく、あまり評判は良くありません。
セスだけだと意味は木の葉だけになってしまうらしいですが、
縮めた方が言いやすいでしょう。
そういえば、今私達は何語で喋ってるんでしょうか。
来たこともない場所なのに、言葉が通じています。
私の口からもよく分からない言葉が出ているのに、意味が分かります。
これも絵本の世界の力なのでしょうか。
>「アラジンの家は、もう少し曲がって行ったところよ。
> ちっちゃくてぼろぼろな家だけどね、ふふ」
そんなことを考えている内に、アラジンさんのお家に近づいてきたようです。
近衛隊長さんも今頃とても慌てていらっしゃることでしょう。
きっとアティファさんのことを心から心配している、いい従者なのでしょうね。
でも私としましては、近衛隊長さんの頭痛よりも、お二人の逢い引きの方が気になるのです。
今は私の直感と本能を愛しましょう。
――――――――――――――
◯PL
明日と明後日書けるかどうか分からないので、早めに投下です。
アラジンのお家まで付いて行きます。