1-始まりへの分岐点
グレースはキャベツの妻を癒すため、村に向かうことに決めた。
そんな彼が気にしていたのは、離れた際のゴーテルについて。
>「僕らのいた地方では、決まった日に男性が女性にミモザの花をプレゼントするんです。
> 女性なら誰でもいいんですよ。
> もし、森の中で見つけたら、僕からプレゼントしますから、待っていてくださいね。」
だからグレースは約束で存在を繋ごうとする。
>「ちゃんと戻ってくるまで待っていてくださいよ?途中で消えるとか絶対ナシですからね?」
しっかりと念には念を入れて。
彼女が消えていなくならないように。
けれど、ゴーテルからの返答は残念ながらなかった。
拒絶されることもまたなかったのであるが。
* * *
グレースとアルフェイトはラプンツェルとレタスと共に森の端へと向かう。
道中ミモザの花を見つけることができたかどうかは、グレース次第であろうか。
森の外に近づいていくと、ラプンツェルの歩みがだんだん遅くなる。
「ごめんなさい。
なんだか気分が悪くなってきたの」
確かに彼女の顔色は悪そうだ。
おそらく――呪いの効果が出てきたのだろう。
「わかりました、もう少し奥で休みましょう。
――グレースさん、アルフェイトさん。
僕が彼女の傍にいるので、彼女のご両親のことお頼みします。
村については少し歩けば見えてきますので」
そう言ってレタスはもう少し森の奥に入っていく。
ラプンツェルを休ませることにしたようだ。
* * *
レタスの言う通り、村はすぐに見つかった。
村の北の方には家が有り、その門の前で一人の男性がぼんやりと立っている。
――彼が、シィノヴィアの言っていたキャベツであろうか。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
こちらグレースとアルフェイトのカテゴリになります。
ラプンツェルとレタスは森の出口近くで離脱します。
ミモザの花については探索判定で11出せば見つけることができるとしましょう。
村はすぐに見つかるので、村の場所まで移動させました。
行動についてお好きにどうぞ。
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僕は、彼女達の姿が見えなくなると、すぐにアルフさんにお願いして、
ラプンツェルさんのお相手を頼むことにした。
「ラプンツェルさん、ちょっとアルフさんがお話がしたいみたいなので、聞いてくださいますか?」
フリーになった王子に僕は、ラプンツェルさんの髪のこと、呪いのことを
よりわかりやすく、詳細に伝えることにする。
「...というわけで、髪を切っても生命にかかわりますし、森を出ることもできないのです。
呪いというのは、かけた本人ならどうにかできると思いますが、
もしかしたら、死でしか解決できないというケースも考えられます。」
だから、僕はゴーテルさんに念を押したのだ。
死で呪いが解決できることくらいなら、想定できる話だから。
「ですが、呪いを解く魔法というのも存在します。僕は、病気を癒す魔法は使えますが、
呪いを解くほどの腕はありません。しかし司教レベルの方であればできるかもしれません。」
そこで、提案をひとつあげる。
「王子が、そういった司教の方を公募されるというのは如何でしょうか。
もちろん、ご自身の結婚式の際の牧師をお願いするという条件をお付けするのです
そうすれば、彼らにとっては宣伝効果になりますから、
名乗り出る方もいらっしゃるかもしれません。
まあ、あんまりヤバい宗派は対象外にされたほうが宜しいでしょうが。」
その間、僕は本の世界に残っていてもいいと思った。
森の中での生活も、しばらくは必要になるだろう。
その間に、様々なアイディアが浮かび、ベストの解決方法が見つかればいい。
諦めなければ、どうにかなる。僕はいつもそうやって乗り越えてきた。
それから、もうひとつの提案をあげる。
「実は、王子が先に塔に登られた後、僕はエントレットという巨木に遭遇いたしました。
彼は僕を見ていました。そして去っていきましたが、エントレットは物知りなのです。
彼に遭遇できたら、呪いを解く方法を知っているかもしれません。」
僕は、アルフさんに呼ばれて振り返った。
ラプンツェルさんが良くない状態らしい。
「ごめんなさい。
なんだか気分が悪くなってきたの」
確かに彼女の顔色は悪そうだった。
王子がすぐに対応する。
「わかりました、もう少し奥で休みましょう。
――グレースさん、アルフェイトさん。
僕が彼女の傍にいるので、彼女のご両親のことお頼みします。
村については少し歩けば見えてきますので」
「でしたら、僕は村に行ってまいります。もしもエントレットに遭遇された時は
聞いていただけると助かるのですが。
アルフさんは、ツノを隠されたほうが宜しいですよ。」
王子が無理ならアルフさんにエントレット探しをお願いしてもいい。
アルフさんは、角丸出しだから、聖印を外した僕の帽子をかぶってもらう。
ブローチ式の聖印は服につけることもできる。機能性も考えた僕の自信作だ。
村に行かなくても、ラプンツェルさんの両親を連れてくるわけだから、
やっぱりツノは隠したほうがいいだろう。
僕は、帽子を取って聖印を胸元につけ替えると、帽子をアルフさんに渡す。
僕は、森を抜けて村に到着した。
村のとある家の前に、ぼんやりと立っている男性。
彼の髪の色は、ラプンツェルさんと同じ黄金色だ。
「こんにちは、僕はシィノさんの仲間の一人で、グレースという者です。
キャベツさんを探しております。」
相手を確認してから要件を伝える。
「シィノさんが、キャベツさんのご夫人と、お嬢さんを会わせたいと申しておりました。
ですが、シィノさんも、お嬢さんも、呪いの影響で森から出ることができません。
シィノさんがゴーテルさんを説得いたしましたので、お嬢さんは護衛の方と一緒に
森でお待ちになっております。僕はご病気のご夫人を癒しまして、お嬢さんのいらっしゃる場所に
ご案内させていただきたく、こちらに参りました。」
護衛の人が王子だと言うと、長くなりそうなので、それはご夫人に会ってから話そう。
僕が神官だということは、わかるだろうか。
一応、月の聖印はついているのだが。
* * * * * * * * *
コルチョネーラです
忙しいグレース。歩いているだけでも頭の中はフル回転。
呪いを解く方法をあれこれ考え、
アルフさんはエントレットと遭遇したら呪いを解く方法に関する情報収取を依頼しますが
一緒に行くでもかまいません。どちらにしても帽子を貸します。
村に行き、キャベツさんを探して要件を伝えます。
たぶん彼がそうだと思いますが、彼がキャベツさんじゃないなら訂正します。
ミモザの木(草ではなく、木に咲きます)は見つからなかったようです。
14:59:50 コルチョネーラ@グレース ≫ 捜索判定 2d6+4 <Dice:2D6[1,3]+4=8>
アルフェイトに頼みラプンツェルを少し話した後。
グレースはレタスに大事な話をする。
所謂ラプンツェルには聞かせたくない話というやつだ。
彼からの提案は二つだ。
まず一つとして神官に依頼して呪いを解いてもらおうというもの。
もう一つはエントレットに会うことで何か知恵を借りるというものだ。
「僕の城にも優秀な神官がいます。
その者の力を借りればいいでしょう。
エントレット......動く木ですか。
見つかればいいのですが、なるべくここを離れないようにするべきかと思うので」
優秀な神官とは彼が最初に話していた人物であろうか。
またエントレット探しには積極的ではないらしい。
彼はラプンツェルを守るためにここにいて。
ラプンツェルは両親に出会うために森の端にいるのだから。
* * *
エントレット探しとラプンツェルの護衛を頼んだあと。
グレースは一人村へと向かう。
彼は村の北側にいる一人の男に話しかけに行った
>「こんにちは、僕はシィノさんの仲間の一人で、グレースという者です。
> キャベツさんを探しております。」
「シィノ......?
ああ、シィノヴィアさんか。
彼女はひとりで来ていたわけではなかったんだな。
んで、俺がキャベツなわけだが......どんな様か?」
自らこそがキャベツであると語る男に対して、グレースは自らの来訪の理由を語る。
彼の妻の病気を癒しに来たこと。
そして、彼らの求める娘が待っているということを。
「本当か......!?」
まず最初に見せたのは信じられないというような表情。
けれど、グレースの聖印を見てその疑念は氷解し。
代わりに顔全体、いや彼全体に広がっていくのは隠しきれない喜びの感情である。
「俺たちは正直払える金もないんだが。
......それでも本当にいいのか?
だったら頼む、あんたは俺たちの恩人だ」
そう言ってキャベツはグレースを家の中に案内する。
* * *
部屋の中は実に質素なものであった。
別段貧乏という程のものでこそはないが、まあ村の中の暮らしなどこんなものだろう。
そして簡易なベッドの中にひとりの女性が寝込んでいた。
その金色の髪と、苦痛に歪んではいるものの整った顔立ちは――ラプンツェルを想起させる。
「俺たちの娘を奪われてから、どんどん心が弱って行ってな。
いつの間にか体まで弱まっちったんだうちのやつは」
キャベツが言う通り、彼女の問題の根源は体ではなく心の方だ。
彼女の病気を治した後も――心のケアが必要になるだろう。
それは奇跡であっても言葉であっても構わない。
グレースが選んで処方するのだ。
* * *
一方アルフェイトはエントレットを探しに行ったかもしれない。
けれど少なくとも村側の森ではその姿はなかった。
グレースが見たのは塔の辺りなのでもっと奥の方にいるのかもしれない。
「少し気分が良くなってきたわ」
戻ってみればラプンツェルの顔色はだいぶ良くなっている。
アルフェイトに向けて健気な笑顔を見せてくれるだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
進行となります。
キャベツの妻の病気を治すには二段階必要です。
まずは《キュア・ディジーズ》などで病気を治すための目標値13の判定に成功する必要があります。
失敗しても成功するまでかけ続けることができます。
続いて心を癒してあげる必要があります。
《サニティ》などで目標値15の判定に成功するか、
心に響く言葉を与えれば元気になります。
アルフェイトはエントレットを見つけることができませんでした。
見つけるためにはもっと森の奥まで行く必要がありますね。
王子は僕の提案に耳を傾け、こう言った。
>「僕の城にも優秀な神官がいます。
>その者の力を借りればいいでしょう。
>エントレット......動く木ですか。
>見つかればいいのですが、なるべくここを離れないようにするべきかと思うので」
「お話して良かったです。そういえば、予言をされた神官の方がいらっしゃいましたね。
それだけの法力をお持ちならきっとどうにかしてくださるでしょう。」
さすが王宮はトップレベルの人材の宝庫だ。呪いはこれでなんとかなるだろう。
王子は動けないので、代わりにアルフさんがエントレットを探しに行ってくれたが、
考えてみたら、彼は探索のスキルというのは持っていなかった気がする。
見つからなかったら見つからなかったでしょうがない。
彼に期待をするのは酷だということに後から気がついた。
* * * *
村に着いて最初の村人。
彼は僕が予想した通り、キャベツさんだった。
シィノさんとの約束が気になり、気が付けば家の前に立って知らせを待っていたのかもしれない。
そうだとしても不思議ではない。長年変化がないと思っていた案件が動き出したのだから。
僕が来訪の理由を告げると
>「本当か......!?」
彼の驚いた表情に、僕は頷く。
>「俺たちは正直払える金もないんだが。
>......それでも本当にいいのか?
>だったら頼む、あんたは俺たちの恩人だ」
「困った時はお互いさまです。お代とかお気になさらず。
僕はそれほど、高位な職に就いておりませんから。」
聖職については、素人同然だと思っていい。
僕の場合、本格覚醒したのはついこの間といっても言い過ぎではないのだから。
しかも、僕にはまだ融通の利かない制約がある。同職の冒険者と同等とは言えないだろう。
* * * * *
案内された家は、村の民家としてはよくある感じの家だった。
奥には金色の髪の女性が寝込んでいた。
>「俺たちの娘を奪われてから、どんどん心が弱って行ってな。
>いつの間にか体まで弱まっちったんだうちのやつは」
生きがいを失うと人は弱くなる。
子育ては大変ではあるが、生きがいを与えてくれるのだ。
病は気からと、よくいったもので、心が弱くなると病気になるというのはよくある話だ。
笑う人は長生きする、という話もまんざら嘘ではない。
「どうぞ、お楽になさってください。
一度でうまくいかなくてもちゃんと癒しますから。」
新米丸出しだが、そのほうがプレッシャーは無い。
何せ初めての魔法だ。まずはやってみることだ。
まず、教わった通りの祈りというのは、
神様にお願いして力を借りるというものだった。
しかし、ご夫人が回復したようにはみえない。
やっぱり今まで通りの僕のやり方のほうがいいみたいだ。
僕は目を閉じ僕流の祈りを捧げる。
僕は彼女を癒します、という自発的な祈り。僕にとっての祈りは宣誓そのものと言っていい。
神様にお願いする、という他力本願な祈りは極力避けるのが僕の流儀だ。
二回目で回復したのだから、僕としては上出来だろう。
「恐らく身体のほうはだいぶ良くなられたと思います。
今まで大変でしたね。」
ここで終わらせてしまってはまた病気になってしまう。
大事なのはこの後だ。
「春は何故こんなに美しい季節なのでしょうか?
それはその前に厳しい冬があるからなんです。
冬は、一見、木々も草も葉をつけず、成長ができてないように見えます。
でも、この時期に根はちゃんと育っているのですよ。」
「お二人は、大事なお嬢様がいなくなってしまってから、辛かったとお察しいたします。
その時期が不幸な時期と申し上げてもよいでしょう。
辛い時期であっても、そのぶん愛は育っているのです。」
辛い時期が決して無駄ではないということをまず教える。
「異国の人は、しあわせ、と、つらい、という字をこんなふうに書くんです。」
僕は羊皮紙とペンを出すと、思い出しながら文字を描いた。『幸』と『辛』だ。
実際に文字を見ればわかるが、これは良く似ている。
「良く似ているでしょう。こっちが『しあわせ』こっちが『つらい』です。
異国の人は、こう考えたんです。辛いという状態は、幸せの一歩手前の状態なんだと。
つまり、辛いことを乗り切った後に、ちゃんと幸せはやってくるということなんです。
乗り越え得られない困難はやってきません。乗り越えたら確実に良い事があるんです。」
結局、魔法の腕に自信が無い僕は、言葉による癒しを選ぶ。
探偵時代はむしろこれが当たり前だったのだ。
小さな探偵事務所での仕事の依頼で圧倒的に多いのは、実は浮気調査というデリケートな案件で、
パートナーに不信を抱く依頼人が僕のもとを訪れた。そしてその多くは女性の依頼人だった。
僕は彼女達の相談に耳を傾け、そして必要な言葉をかける必要があったのだ。
「ああ、言い忘れておりましたが、お嬢さん...ラプンツェルさんなんですが、
今、護衛として一緒にいてくださっている方は...実はレタス王子なんですよ。」
もしも、ラプンツェルさんが普通の村娘として育っていたのなら、
村の若者の間ではモテたにちがいない。でも、王子との縁はなかっただろう。
塔で閉じ込められていた分、ちゃんと彼女にも幸せは巡ってきている。
僕はそう感じたのだった。
* * * * *
コルチョネーラです。
キュアデイジーズは二回目で成功。
サニティは使わず、言葉による処方を迷わず選択しました。
変転つかえばサニティもいけたんですけどね。
グレースの目指している方向はカウンセラーとしての役割でしたし、
ロール的にもこっちのほうがオイシイと思いましたしね。
21:02:55 コルチョネーラ@グレース ≫ 病気治癒判定(TAKE 2) 2d6+8 <Dice:2D6[2,6]+8=16>
21:01:36 コルチョネーラ@グレース ≫ 病気治癒判定(TAKE 1) 2d6+8 <Dice:2D6[1,3]+8=12>
グレースは一度目は失敗したものの......二度目の行使によって女性の病魔を取り除く。
彼女が病に苦しむ様子はなくなったものの。
それでも彼女は弱々しい。
心が――弱ってしまっているのだ。
どこかぼんやりとしている彼女に向けてグレースは言う。
彼は神の奇跡ではなく言葉によって心を癒そうとしているのだ。
彼女が心を病んだ理由は――娘との別離。
けれどその別離の道に光が差し。
別離があったからこその驚きと奇跡があったことを丁寧に語る。
「つまり......あの子に会えるということ?
王子様と森で待っているの?」
ベッドから体を起き上がらせた女性は未だ情報を認識できていないようだ。
――それも当然だ。
奇跡など起きないのが当然のことで。
それが幾重にも重なったという話を簡単に信用できるわけもない。
けれど、グレースが神官としての姿を見せていることから。
この希望は彼女にとって確かなエネルギーへと変換されたようだ。
「俺も本当かどうかはわからない。
けれど、嘘かどうかだってわからない。
だったら行ってみないか?
そこに行けば真実がわかる......そうだろう、ミズナ」
キャベツはミズナと呼ばれた婦人の手を固く握る。
そんな夫の気持ちに応えるかのように彼女も頷いていった。
「私も行きます。
神官様、森の方まで向かいましょう」
ミズナはゆっくりと自らの足で立ち上がり。
そして――歩き出した。
* * *
再び舞台は森の端の方まで移る。
そこにはラプンツェルとレタス、そしてアルフェイトの姿があった。
「あれは......」
ラプンツェルの瞳に映ったのは二人の人影。
黄金色の髪をした男女の姿だ。
グレースも二人についてきているならそこに姿がきっとあるだろう。
その二人の男女はこちらに気がついた様子を見せると力強く走り出す。
やややせ細って見えた女性の方も、何かが元気で満たしたかのような勢いだ。
そして駆け寄ってくる女性はラプンツェルを固く抱きしめる。
「私は......ずっとあなたに会いたかった。
あなたに会えない日々が続いていくのを恨めしく思っていたわ。
こんな運命を齎した神のことすら何度呪ったことかわからない。
......でも、違ったのね。
あなたにこうして神は運命は出会わせてくれた。
ありがとうラプンツェル――愛してるわ」
ミズナはラプンツェルを更に強く強く抱き締める。
彼女の青い瞳からは真珠のように涙がぽろりぽろりとこぼれ落ちていく。
少し後ろで立っているキャベツの瞳も潤んでいるようだ。
「お母さん......?
お母さんとお父さんなの......?」
抱きしめられながらラプンツェルは答えを求める。
「そうよ、私たちはあなたの家族なの。
離れていても決して切れることはない――血という絆で結ばれた家族なの」
もう離したくないという思いがそうさせるのか。
ミズナとラプンツェルの距離はより近づき、一体となる。
「そう......これがお母さんの温もりなのね。
私、知らなかったわ。
だから今こうして感じられて――とても......嬉しい」
いつの間にか泣いているのはミズナだけではなくなっていた。
彼女とよく似た容姿を持つラプンツェルの瞳からも涙が流れ出していたのだ。
そんな家族たちの再会を――レタスは少し離れた場所で見ていた。
* * *
「ねえ、ラプンツェル......これからは一緒に暮らせるのよね?
もう離れ離れにはならないわよね?」
ミズナがラプンツェルを見据えながら問いかける。
勿論には彼女は期待している答えがあるのだろう。
「お母さん......。
私は......」
けれどラプンツェルはその約束に答えられない。
ゴーテルの存在と――何よりこの森から出られないという事実が回答を鈍らせるのだ。
――そんなときだった。
ラプンツェルの髪が強く輝き始めたのは。
そしてその強い輝きは一点に集まっていく。
まるで巻き戻るかのように。
光の髪はとてつもない長さから人並みより長い程度まで縮まっていく。
「まさか......呪いが......?」
レタス同様グレースとアルフェイトも気がつくであろう。
ラプンツェルの呪いが解けていったのだ。
それはつまり――彼女の自由を意味する。
「ラ、ラプンツェル?
何があったの?
大丈夫なの?」
何が起こったのか把握できていないミズナは。
ラプンツェルの身に良くないことが起きたのではないかと不安がる。
しかしラプンツェルは笑顔で答えた。
「ううん、違うの。
なんだか身体が軽くなったような気がするわ。
今ならどこにだっていけそう」
そう――今のラプンツェルはどこにだって行けるのだ。
ミズナとキャベツの家に行くことも。
レタスの城に行くことも。
ゴーテルの元へ帰ることも。
「でも、どうしたらいいのかわからないの。
私はずっと独りで自由なんて考えたことがなかったから」
そんな彼女はひどく混乱している。
そっとアドバイスをしてあげるのもいいかもしれない。
そこに利己的な気持ちがあったとしてもだ。
てみればラプンツェルの顔色はだいぶ良くなっている。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
進行となります。
NPCの掛け合いのシーンはPCが行動を挟みにくいので、
行動できるところまで進めましたので長めに。
ミズナの病気を治したため、グレースにHPを1点。
ラプンツェルと再会させたため、更に1点ずつを差し上げます。
グレースは村に留まることも、森まで一緒に行くこともできます。
アルフェイトの位置は固定です。
皆さんは次の行動を選択してください。
具体的なものは以下の3つです。
・村に向かうよう提案する
・城に向かうよう提案する
・戻るように提案する
ここでの提案が物語の結末に大きく関わってくることでしょう。
他にも何かあればご自由に行動ください(*´∀`*)
キャベツさんのご夫人は、元気を取り戻した。
娘さんが生きていること、そして会えることが彼女にとってとても大きい。
>「つまり......あの子に会えるということ?王子様と森で待っているの?」
「ええ。お会いになれますよ。そのためにお待ちになっているのですから。」
>「俺も本当かどうかはわからない。
>けれど、嘘かどうかだってわからない。
>だったら行ってみないか?
>そこに行けば真実がわかる......そうだろう、ミズナ」
見た限り、夫婦仲は悪くないようだ。
この二人は親が決めた結婚で結ばれたわけではないだろう。
それに、入り婿でもなさそうだ。
>「私も行きます。
>神官様、森の方まで向かいましょう」
「グレースでかまいませんよ。本業は冒険者ですし、
神官様と呼ばれるのはちょっと照れくさいんです。」
僕の中では探偵が本来の姿だと思っている。
でもまあ、冒険者というのが正直な身分だろう。間違っても神官という意識はない。
僕は二人を娘さんのいる場所に案内する。
* * *
森の端の方に3人がいた。
ラプンツェルさんの顔色は思ったほど悪くない。
呪いに慣れたのか、呪いが解けたのか。何かがあったことは間違いないだろう。
両親は成長した娘さんの姿を見て、走り出す。
感動の再会の場面だ。
>「お母さん......?
>お母さんとお父さんなの......?」
>「そうよ、私たちはあなたの家族なの。
>離れていても決して切れることはない――血という絆で結ばれた家族なの」
血の縁というのは特殊なものだ。
どんなに離れていても、繋がっている。
>「そう......これがお母さんの温もりなのね。
>私、知らなかったわ。
>だから今こうして感じられて――とても......嬉しい」
こうしてみると、二人は良く似ている。
やっぱり親子なんだと。観ていてよくわかる。
* * *
>「ねえ、ラプンツェル......これからは一緒に暮らせるのよね?
>もう離れ離れにはならないわよね?」
これは、結婚を経験した母親ならわかっているはずだ。
娘を手放したくない、という気持ちはあるだろうが...。
>「お母さん......。私は......」
まずは呪いの件をどうにかする必要がある。
王子に頼んで神官を連れてきてもらう、そうでないとここから出られない。
そう思っていたら、彼女に異変が起きる。
「これは?・・・まさか。」
髪が輝き、そして、不自由の無い長さまで短くなっていく。
それ自体は悪いことではない。呪いが解けたということで間違いないだろう。
問題は、それがゴーテルさんが自発的にそうしたのか、それとも
それとも・・・
いや、最悪のパターンも考えられるが今はやめておこう。
>「ううん、違うの。
>なんだか身体が軽くなったような気がするわ。
>今ならどこにだっていけそう」
きっとシィノさん達がうまくやったんだ。
そう考えることにする。
「それは良かったですね。ここから無事に出られるということですから。」
>「でも、どうしたらいいのかわからないの。
> 私はずっと独りで自由なんて考えたことがなかったから」
「そうですね。貴女にとっては初めてご自分の人生を決められる状態になったのです。
本来なら、他人がどうこう言える立場ではないんですよ。
ラプンツェルさんが一番に望んだ道を選ぶべきなんです。」
僕は、状況を説明することにする。
「恐らく、子供に恵まれなかったゴーテルさんも、
子供を産んで家族としての生活を望んでいたご両親も、
ラプンツェルさんを見初めた王子も、皆、ラプンツェルさんと一緒にいることを望んでいます。
誰と一緒にいたいですか?と言われても急には答えられないですよね?」
僕はまず、キャベツさんとミズナさんに話しかける。
「あの、不躾な質問で申し訳ありませんが、
お二人はどのように出会われてご結婚に至ったのですか?
その経緯をお話しくださると嬉しいのですが。」
これは僕の予想だが、
ミズナさんは恐らく非常に美しい方で、
キャベツさんが彼女に猛アタックして、結婚にこぎつけたのだろうと思う。
ライバルだって恐らくいたに違いない。
もしくは既に相手がいたところを奪って駆け落ちしたとしても
不思議ではないと思う。少なくとも親が決めた結婚ではないだろう。
その話を一通り聞いた上で、僕は答える。
「ラプンツェルさんは、ご両親と一緒に暮らすことになったとしましても、半年もしないうちに、
村のどなたかがお見初めになるのではないかなと思いますよ。
王子が気に入るほどの美しいお方ですから、村の男性だって
放っておくというのは考えにくいんです。」
「結局は誰かと結婚して家を出ることになると思うんです。
反対されたとしてもお二人の意志が固ければ駆け落ちするという道もありますよ?
そうさせない方法は、やっぱりゴーテルさんと同じ、
誰とも会わせない以外にないのではないでしょうか?
それとも、婿に入ってくださるような方を探すおつもりでしょうか?」
まだ子供であれば親子で暮らすという選択肢はあったと思う。
だが、ラプンツェルさんは年頃の女性になってしまっている。
家族で暮らすには年齢的に遅いと僕は感じている。
この場合結婚相場が高いうちに、嫁に出すというのがセオリーだと思う。
ただ、ラプンツェルさんがそういう道を選ばないのならそれでも良い。
ラプンツェルさんは、教養のあるゴーテルさんの元で必要な知識は得ているだろう。
だが、他の同世代の娘さんに比べて、村での生活での適応力には疑問が残る。
どなたか村の男性と結婚することになったとしても
炊事、洗濯、裁縫、その他、実務的なことで遅れてしまっている。
これらは、結婚してから頑張ってもらうとして、
一番問題なのは、村の社会に馴染めるかどうかだ。
村の同世代の女性達とは一切交流がなく、突如、絶世の美女となって戻ってくる。
これがどういうことかわかるだろうか。
競争社会の中で、この手の女性は陰湿なイジメの対象になりやすいということだ。
突如現れた美女は、良い人と結婚して幸せになりたい同世代の女性にとって決して歓迎されない。
世の男性は外見重視で若くて美しい女性を選ぶからだ。
だからそういう女性が現れると、女性は危機感を煽られる。
女性達はそれぞれ別々に戦っていたとしても、
相手が絶世の美女ともなれば、その時だけは一致団結して対抗するだろう。
女性達だって自分の幸せのために戦う。好きな男性のためならライバルは蹴落とすのだ。
そういう競争社会の中でラプンツェルさんは耐えられるだろうか。
小さい頃から、仲良くしているならそんなことはないだろうが、
ラプンツェルさんにはそれがないのだ。
うまくやらないと孤立してしまうだろう。
環境に馴染めないという意味ではお城に行ったとしても苦労はあるだろう。
だが、少なくとも社会的な立場ではずっと上になるわけだし、
うまくやっていく必要があるとすれば、王子の母親くらいだろう。
村で暮らすのはそれらに馴染めず、絶望してからでも遅くない。
「お城に馴染めないようでしたら、
ご両親の家に行っても宜しいのではないでしょうか。
でも、一番大事なのはラプンツェルさんが、望んだ道を選ばれることですよ。」
さて、こちらがまるく収まりそうなら、そろそろゴーテルさんの所に戻ったほうがいいだろうか。
呪いが解けた経緯が気になる。最悪のケースでの解決でないことを祈りたい。
* * * * * *
コルチョネーラです。
やんわりと城に行く提案をしますね。
提案だけして、ゴーテルさんの所に戻ろうと考えていたりします。
正直、ラプンツェルさんは村で馴染めるように見えないんですよね。
女性の友達、つまり両親以外の味方がゼロで、とびきりの美人なんて言ったらイジメられそうですし。
下手すると、「塔での生活のほうが幸せだった」って言い出す可能性も出てくるでしょう。
村で生き抜くには「ずるさ」「したたかさ」「要領の良さ」を身に着けないとキビシイだろうなぁ。
でも、それやっちゃったらヒロインじゃないですもんね。
グレースの考察には「オンナの本音」があったりしますが、
探偵時代に「オンナの本音」をさんざん聞かされていたんでしょうね。
この先はどこへ進むべきか。
ひどく迷う様子を見せるラプンツェル。
>「恐らく、子供に恵まれなかったゴーテルさんも、
> 子供を産んで家族としての生活を望んでいたご両親も、
> ラプンツェルさんを見初めた王子も、皆、ラプンツェルさんと一緒にいることを望んでいます。
> 誰と一緒にいたいですか?と言われても急には答えられないですよね?」
そんな彼女にグレースは優しくアドバイスを送る。
まず彼が目をつけたのはキャベツとミズナの夫婦についてだった。
二人がどのように結ばれたのかという話だ。
「まあ......なんだ、実際に口にすると恥ずかしいけどな。
俺からこいつに何回も何回もアタックし続けたんだ。
諦めずに続けたらついには少し振り向いてくれて......。
そこからは今に至るわけさ」
どうやら一目惚れしたキャベツがめげずにアタックし続けたことで結ばれたのだそうだ。
そう考えるとレタスのラプンツェルへの態度は......。
キャベツのそれのリフレインと言えるかもしれない。
尤も二人は現状では結ばれてなどはいないが。
一通りの話を聞き終えてグレースは言う。
ラプンツェルが二人の元に戻ってもいつまでも一緒にいられるわけではない。
キャベツがミズナを愛し、二人の世界を作り出したように。
ラプンツェルも誰かに愛され、その者と共に歩む人生へ旅立つかもしれないのだ。
そして彼が勧めたのは、城へと向かうことであった。
「そんな......でも......」
懇願するような瞳でグレースを、そしてラプンツェルを見つめるミズナ。
そんな彼女の肩をぽんぽんと叩くのは――キャベツであった。
「お前だって本当はわかっているんだろ?
この世界に永遠に続くものなんてないんだ。
それに俺たちが本当に願うべきなのは――自分たちだけの幸せじゃない。
俺たち二人の大切な宝物......ラプンツェルの幸せだ」
優しくミズナを包むキャベツの表情は男の顔、夫の顔......そして父の顔だった。
「でも、せっかく会えたのに......。
また離れ離れにならなければいけないなんて......悲しすぎるわ」
夫の腕に包まれながら――ミズナはほろりと涙を流す。
「問題ないさ......別の世界に行ってしまうわけじゃない。
会いたいと思えば、会いに行けばいいんだ。
今までと比べるとずっと――ずっと近くにいるんだ。
魔女にとらわれているわけじゃないんだから」
ミズナの流す涙を拭いながら語りかけていたキャベツは。
そこまで語りかけ終えた後ラプンツェルの方へと視線を移す。
「ひとつ忘れないでくれ......ラプンツェル。
お前がたとえどこに行ったとしても。
お前の家は――あの村にある。
お前が訪れてくれるのをずっと待ち続けているんだ」
そして彼は愛しい娘をしっかりと抱きしめる。
「ありがとう......お父さん。
お母さんも......ありがとう」
* * *
しばらくしてキャベツが言う。
「お前は一度森の奥へ戻るつもりなんだろう?
目を見ればわかるさ」
そう言ってミズナと共に村の方角へ数歩下がる。
「そう......お婆さんにお礼を言いに行かなくちゃ」
ラプンツェルはやはり一度ゴーテルの元へと戻るつもりなようだ。
「お礼か......まあ、いいさ。
お前の好きにするといい。
――皆さん、この子に合わせてくれて本当にありがとうございました」
キャベツはラプンツェルと冒険者たちを見送ってくれる。
「――王子。
ラプンツェルを宜しく頼みます」
「任せてください。
必ず――僕が彼女を守ります」
そしてそれはキャベツとレタスの間で交わされる男の約束。
「じゃあ、いってらっしゃい。
私の可愛いラプンツェル......!」
最後に見送ったミズナの表情は――素敵な笑顔だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
NPCの掛け合いが多かったので長くなりました。
ラプンツェルは城に行くことにしたようです。
合流とその後のシーンはまたあとで投稿します。
僕はキャベツさんとミズナさんの結婚までの経緯を尋ねた。
>「まあ......なんだ、実際に口にすると恥ずかしいけどな。
>俺からこいつに何回も何回もアタックし続けたんだ。
>諦めずに続けたらついには少し振り向いてくれて......。
>そこからは今に至るわけさ」
ほぼ予想通りの答えが返ってきた。一目惚れ、するでしょうね。
結婚は男性のほうが惚れ込んでいたほうが幸せになるというのが一般的だ。
ラプンツェルさんが迷っていたので、僕が城に行くことを勧めると、
>「そんな......でも......」
ミズナさんは悲しそうな目をする。
普通、結婚が絡むと、父親のほうが難色を示しやすい。
娘は父親の最後の恋人と言われているからだ。
しかし、娘という時代すら共有できなかったのだから、
今回は父親のほうが落ち着いている。
>「お前だって本当はわかっているんだろ?
>この世界に永遠に続くものなんてないんだ。
>それに俺たちが本当に願うべきなのは――自分たちだけの幸せじゃない。
>俺たち二人の大切な宝物......ラプンツェルの幸せだ」
>「でも、せっかく会えたのに......。
>また離れ離れにならなければいけないなんて......悲しすぎるわ」
>問題ないさ......別の世界に行ってしまうわけじゃない。
>会いたいと思えば、会いに行けばいいんだ。
>今までと比べるとずっと――ずっと近くにいるんだ。
>魔女にとらわれているわけじゃないんだから」
僕は頷いた。
「お城の出入りは許されると思いますし、娘さんの外出も許されると思いますよ。
それに、誕生日などのパーティに呼ばれることもあるでしょうし、
思っていたほど離れ離れというわけではないでしょう。」
それから、これは口には出さなかったが、
結婚する場合は、子供ができる可能性もあるということでもある。
キャベツさんもミズナさんもお孫さんの顔は見たいだろう。
これを口に出さなかったのは、子供を持つことが義務だと僕は思っていないからだ。
これは天からの授かりものだ。
王室だと殆ど義務になってしまうんだろうが。
親子の対面はほんわりと暖かな別れで決着する。
一番ベタで、ありがたい方向に。
* * *
>「お前は一度森の奥へ戻るつもりなんだろう?
> 目を見ればわかるさ」
>「そう......お婆さんにお礼を言いに行かなくちゃ」
おや。僕はここで親子3人と王子と別れて二人で帰還と思っていたが、
王子もラプンツェルさんも一旦戻るようだ。
>「お礼か......まあ、いいさ。
> お前の好きにするといい。
>――皆さん、この子に会わせてくれて本当にありがとうございました」
「また会えますよ。」
僕は微笑むと右手をちょっと上げて挨拶する。
そして、僕ら4人は再び元の道に戻っていくのだった。
* * * * *
僕は道すがら、考えた。
子供を欲しいと思っている人もいれば、生まれることを望まれずに捨てられる子もいる。
シーン神殿には、望まれずに捨てられた赤ちゃんを保護することがある。
ナイトメアのシーン神官がいるというのはそういう理由が多い。
(こうのとりのゆりかご制度)
子供が欲しいと思っている人にそういう赤ちゃんを譲るという制度
これをシーン神殿でも本格的にやるべきだろう。
僕も神殿でなんらかの活動をするべき時期に来ている。
捨てられた赤ちゃんに事件性がないかどうか、
そういうことを調査するのは僕が適任だろう。
帰ったら進言してみよう。
* * * *
コルチョネーラです。
とりあえず、帰路までの話はこちらに書きました。
合流後はまた別に投稿します。
剣の欠片は2D(つまり2個)振りますね。
まだ変転温存してますからね。