C3_日常に迫るは

 GM(あんみつ) [2015/10/19 00:44:31] 
 

フィンとアポロが七色の調べ亭を去ったあと、二ェストルはカウンターについたアンネの元へ向かう。

>「...バタバタしているときに申し訳ないのだけれど

> 今夜 こちらに部屋の空きはあるかな?

> できればシングルを二部屋がいいのだけれど 難しいかな?」

「ええ、まだ空いているわよ。
 事件があってからはちょっと、ね......。
 一応聞いておくけれど、うちで平気なのかしら?」

大丈夫、という問いかけは間違いなく事件のことであろう。
人の噂とは客商売については最重要項目の一つである。
いい噂、悪い噂――それぞれの影響は計り知れないところがある。
わざわざ予め確認した理由はあとあと問題になることを防ぐためであろう。

「もし問題がないようならば......お部屋お取りさせていただきますね」

アンネは二ェストルに向けて営業スマイルで微笑んだ。

   *   *   *
 
一通り二ェストルの手続きを終えたあと歩み寄るひとつの姿。
プリアーシェ――彼女である。
その手に握るのは、カイルの記した委任状だ。

>「この店の御主人はあなたでしょうか。
> 仕事のお話があります。ヴォルディーク家からの――カイル・ヴォルディークからの要請です」

「ええ、私で間違いないわ。
 彼から来るなんて――珍しいこともあるものね」

プリアーシェから委任状を受け取って差出人だけ確認して彼女の傍に置く。
独りで封の中身をわざわざ見るような無礼な真似はしなくとも、
今目の前にいるプリアーシェとの対応で十分だということだろう。

>「用件についてはおわかりでしょう。
> コンチェルティアを騒がす事件の解決について、です。

少しして、プリアーシェは本題を切り出す。
勿論内容はこの店に大いに関わる連続殺人事件についてである。
自らの素性を明らかにした上で、プリアーシェが要請するのは七色の調べ亭の協力である。
情報を入手するためには一番有効な方法――それは手数を増やすことである。

「そうね、それなら――」

アンネが話し始める前に。

「その話、俺にもやらせてくれよ。
 いいだろ、アンネ姉さん」

気がつけば後ろに立っていたグラディウスが名乗りを上げた。

「俺はグラディウスだ。
 実はルキスラの冒険者にも知り合いがいてな――あんたは知らん奴かもしれんが。
 まあ俺は頭とか働かないけどな、体力だけはあるぜ」

実際プリアーシェが見てもあまり頭が働くようなタイプではない。
それに武器を敵に当てる力はまだしも、細やかな作業も苦手そうではある。
だが見ただけで明らかに鍛え抜かれた肉体と頑丈さはうまく使えば使い道はあるだろう。

グラディウスの会話をカウンター越しに聞いていたアンネであったが。

「わかったわ、グラディウス。
 この件はあなたに任せるわね。
 それで構わないかしら――プリアーシェさん?」

一応プリアーシェにも決定権はあるようだ。
勿論拒否したところで次の代打がすぐに来るかはわからないところであるが。

   *   *   *
 
一区切りついたあと、プリアーシェは幾つかの質問を投げかける。
まずはエンブレムについてである。

「そうね、この店のエンブレムはヴァイオリンと虹のモチーフを組み合わせたものよ。
 一応通し番号での管理はしてあるわ。
 ただ失くした子には同じ番号を渡しているから複数ある可能性があるものもなくはないし。
 何よりも、落ちていたエンブレムは番号の部分が削られていたらしいわ。
 ......だからこそ、何とも言えない状況に置かれているのだけれど。
 本当にそこにナンバーがあったのかもわからないし、何しろここは芸術の街だから。
 二つ目の質問については、残念だけどいないわね」

現場に落ちていたエンブレムはナンバーの部分が削り取られていたらしい。
だから本当にこの店の冒険者が落としたのか、他の者が落としたのか。
――そもそもこの店で配ったものなのかもわからないらしい。

そして、最後にプリアーシェが付け加えたことについては。

「それって、ついさっきカウンターに来てたシャドウの彼のことかしら?
 ただの旅芸人ではないとは思ったけど――そういうことなのね。
 ただ、私から彼に仕事を頼むことはないわね。私はグラディウスに託しているから。
 もっとも調査に協力してくれて成果を出してくれたならお礼はさせてもらうわ」

少なくともアンネ自身から依頼するつもりはないらしい。
プリアーシェが二ェストルに話を振り、協力し結果を出した場合は礼をするらしいが。

   *   *   *
 
フィンとアポロは仲良く3番街の駄菓子屋の前までたどり着いた。
ほのかに甘い匂いが漂ってきて少しお腹がすいた気分になる。

「ここの焼き菓子が美味しいんだー。
 ネス兄ちゃんにも買って行ってやんないとな」

散売りのクッキー、ビスケット、キャンディ。
さまざまなタイプのお菓子類が売られている。
アポロはどれを買おうか悩みながらうろちょろしているようだ。
店内で手をつないで歩くのはちょっと難しいかもしれない。

「フィンは何食う?
 これとかおすすめだぜ!」

アポロがおすすめするのは、ミルクの匂い仄かな焼き菓子である。
今のところフィンが心配するようなことは何も起きていない。

アポロと楽しくお菓子を買って食べることができるだろう。
穏やかでのんびりした時が流れていく。

お菓子を食べたらアポロは満足するだろうか。
そろそろ帰路についてくれるかもしれない。


―――――――――――――――――――――――――――――――

あんみつ@GMより

こちらは二ェストルとフィン用の新しいカテゴリです。
ここからの2人のPCの日記はこのカテゴリにご記載ください。
またプリアーシェも引き続きこちらにどうぞ。

二ェストルは泊まるのであれば予約を取ってください。

プリアーシェはグラディウスを調査仲間に引き入れるかご決定ください。
引き入れる場合は何をやってもらいたいか記述していただければ、
その通りにグラディウスを動かします。

また二ェストルを調査仲間に引き入れるかもご決定ください。
こちらについてはどちらから切り出していただいても構いません。

フィンはお菓子を買うのであれば、5~15ガメルほどで任意のダイスをお支払いください。
食べないのならガメルを使用されなくても構いません。
またフィンは2D6の予備ダイスを2回お振りください。

二ェストル、プリアーシェ、フィンの3人はそれぞれ次の行動をご決定ください。
様々な行動が取れると思いますので、お任せいたします!
基本的には何していただいても問題ございません!

このカテゴリに記事を投稿する際は、
カテゴリ『B3_日常に迫るは』にチェックを入れて投稿してください。

 二ェストル(飛龍頭) [2015/10/19 23:57:52] 
 

>「ええ、まだ空いているわよ。

> 事件があってからはちょっと、ね......。

> 一応聞いておくけれど、うちで平気なのかしら?」

「あぁ、べつに問題ないよ

 少なくとも あなたは信じているんだろうし

 ...違うかな?」

― 真相がどうあろうと相手が信じていればそうなってしまう。

アンネの問いかけは、信用を得るための誠実さなのだろう。


>「もし問題がないようならば......お部屋お取りさせていただきますね」

>アンネは二ェストルに向けて営業スマイルで微笑んだ。

「少しの間だけれど 世話になるよ」

後ろからやってきた小柄な女性に場所を譲り、少し場所をあけ

彼女らの話を聞くとはなしに聞いておく。


>「仕事のお話があります。ヴォルディーク家からの――カイル・ヴォルディークからの要請です」
>「用件についてはおわかりでしょう。
> コンチェルティアを騒がす事件の解決について、です。

店側は汚名を雪ぐチャンスと後ろ盾、ではヴォルディーク家側は?

(カイル・ヴォルディーク...街で少し聞いてみるとしようか)


   *   *   *

荷物を七色の調べ亭へ置き、アポロが

>「いい宿だけどめっちゃ高くて泊まれないんだ」


と評した黒銀の鍵盤亭に演奏がてら街の情報を集めに出る。

いつも通り 弦にかけたピックに 違和感を感じたその時

「― ッ!!」

ブツリと鈍い音を鳴らし、鋼鉄の弦が一本 切れた。

自由になれた喜びか、支えを失った悲しみか、悶えるように暴れたそれは

私の頬をかすめ、静かに地に落ちる。

「ご歓談中のみなさま、御不快の念をおかけしました

 これは私の至らなさが招いた結果です。どうぞ

 無学の者の無礼とご容赦くださいますよう、お願い申し上げます」

静止した空気と集まる視線に、謝罪のため深く頭を垂れた。

―――――――――――――――――――――――――――――――
PLより
まずは所持金の変動からー
アポロへのお小遣い:15G、一週間の宿代:320G(160G*2)で
所持金1,100G → 765G になりました。


そして、フィンを待つ間 辻演奏をしながら
聞き込み判定(任意の技能+知力B)CG-63、EX-122
をしたいと思います。

・殺人事件について
 衛兵の動き、捜査の進捗、七色の調べ亭、被害者、
 疑われたりした人や工房があれば。

・ヴォルディーク家について
 数年前の事件よりも現当主のカイルについて街の声を
 聞きたいかなーと。
 あんまり評判がよろしくないようなら関わるの嫌ですし。

・ヴォルディーク家と関わりの深い他の貴族について
 仲がいい・悪い、あと同じように古くからある名家 他ありましたら
 聞いておきたいです。

とりあえず思いついたのはこの位ですが、追加するかもしれませんー。


【判定ダイス】
 21:49:30 飛龍頭@ネス 2d6+8 楽器の演奏 Dice:2D6[1,1]+8=10
 21:49:46 飛龍頭@ネス ファッ!

 21:52:47 飛龍頭@ネス 2d6+2+1 フェアリーウィッシュ込みの聞き込み Dice:2D6[3,1]+2+1=7
 21:53:30 飛龍頭@ネス 固定値部分まちがえた!2じゃないよ7だー!

ええと、バード技能分を足すと、ダイス[3,1]+7+1 で12となりました。
とりあえず 情報が集まるといいなぁ...(白目

 フィン(雪虫) [2015/10/20 23:37:15] 
 

 すこし緊張しながら、でもそれがけっしてアポロに伝わらないように気をつけつつ、僕は手をつないで3番街の街並みを歩きはじめた。

 >「ちょっと歩くけど同じ3番街だし、遠くはない。
  安くて美味しいお菓子がいっぱいあるんだぜ、超いいだろ?」

 お菓子屋さんは【七色の調べ亭】から近いんだ。それならよかった。
 「殺人事件」のことに触れてみると、アポロは思いきり眉をしかめた。

 >「ホント迷惑な話だよなー。
   おかげで昨日まで勝手に出歩いちゃダメってうるさいんだぜ。
   こっそり出ようとしたらアイリに見つかって、すぐチクられてめっちゃ怒られたし。
   今日からやっと外で遊んでオッケーって言われたばっかなんだ」

 やっぱりお家のひとも心配してたんだ。それにしても、こっそり出かけようなんて、この子は......。
 アポロの家はどこかと聞くと、

 >「おれは5番街に住んでるぜ。
   うちの近くにはちっちゃいスペースがあってさ。
   そこでいっつもボール蹴ってんだ」

 と目をかがやかせた。でもアイリのことを聞くと、

 >「アイリは確かにおれより一個上だけど......。
   だからって俺より偉いなんて認めてないからな!」

 って、むきになる。

 「あはは、うん。そうだよね」

 アポロは、ほんとに見たままのふつうの家のふつうの男の子みたいだ。アイリもきっと、ふつうの女の子。
 でもこれくらいの時期の1歳違いって、ずいぶんと差があるんだよね...。女の子のほうがおませだしなぁ。
 最後に「秘密基地」のことを聞いてみると、アポロはこう言った。

 >「うん、まあ確かにそうだな。
   あとでアイリに会いに行って許可を貰えたら教えてやるよ!」

 「うん、楽しみにしてる」

 案外、ほんとにほほえましい、「アポロとアイリだけの秘密基地」なのかもしれないな。まわりの大人たちもちゃんとそのことを知ってるような...。そのことをたしかめたら、すこしは安心できるよね。
 僕はにっこりして、アポロの右手をぎゅっとにぎった。

 しばらく歩いて、アポロは一軒のお店のまえで立ちどまった。

 >「ここの焼き菓子が美味しいんだー。
  ネス兄ちゃんにも買って行ってやんないとな」

 つないだ手をぐいぐいとひっぱる。
 僕は手をひかれるまま、お店の戸口から中へはいった。

 「こんにちは......」

 ルキスラでも見かける高級菓子店ではなくて、カラフルなお土産屋さんともちがって、なんていうか、ここは「駄菓子屋さん」っていう種類のお菓子屋さんだと思う。
 「お菓子屋さん」の存在だけでも田舎から出てきた僕には衝撃だったけど、さらにいろんな種類があるんだっていうことを知ったのはつい最近だ。
 素朴なお菓子がたくさんならんでいて、どこか居ごこちがよかった。

 >「フィンは何食う?
  これとかおすすめだぜ!」

 ひょいと鼻先に差しだされたのは、ミルクの甘い香りがする焼き菓子だった。おいしそう。

 「僕、これにする」

 あんまりお店は広くない。つないだ手をはなして、アポロはお菓子選びに夢中だ。僕はアポロが選んでくれた焼き菓子をひとつかごに入れて、ネスさんへのお土産をさがした。
 アポロも選ぶだろうけど、一応、僕からも。マシュマロはちがう気がする。ビスケットとか、クッキーとか...かなぁ...。 
 いろいろ見てまわると、量り売りのコーナーにビターな色合いのチョコレートがあった。なにも中にはいっていない、シンプルなチョコレートだ。備えつけのおおきな匙で、ひとすくい3ガメル。これにしよう。
 あと、大好きなショートブレッドもあったから、ついかごに入れてしまった。これは自分用のおみやげ。明日にでも食べようかな。
 
 ふたりでお菓子を選んで、お会計をすませ、店内の窓際のベンチに並んで座った。ここで、買ったお菓子を食べてもいいみたいだ。
 僕は焼き菓子の包み紙をひらいて、ひと口かじってみた。さくっという音がして、はちみつとミルクの甘みがひろがった。

 「アポロ、これ、おいしい!」

 さすが、おすすめなだけはある。僕はしあわせな気分でふた口目をかじった。 

 「......アポロさ、今日から外で遊んでいいってお家のひとに言われたんでしょ?どうしてだか言われた?犯人がつかまったとか、聞いた?」

 お菓子を食べながらアポロのようすを見ていたら、ふと気になることが思いうかんだ。
 どうして「今日から」アポロは外で遊べているんだろう。
 もし犯人が確保されているのなら、心配はない。でも、さっきの【七色の調べ亭】でのようすを見るに、どうもそうじゃない気がする。
 アポロの保護者のひとは、どうしてこの子を外に出せると判断したんだろう。街のひと達は、なにかを知っているんだろうか。
 心配ないって、思える理由が、なにか。

 とはいえ、気がかりなのはそれくらいで、僕もアポロものんびりとお菓子を食べた。僕のほうが先に食べおわって、ゆっくりとアポロを待つ。 

 「アポロ、今日はありがと。これ以上おそくなると、お家のひと達が心配するね。いったん【七色の調べ亭】にもどってネスさんにお土産をわたしたら、ふたりでアポロを5番街まで送っていくよ」

 ちょっと待ってね、と僕はアポロにことわり、ふかく息をはいて遠くはなれたポチと意識を同調させた。

 ざわざわとしたたくさんのひと達の声が聴こえる......。
 ポチの目を通して、にぎやかな場所で楽器を手にしているネスさんの姿が見えた。どこにいるのか、何をしているのか、よく観察してみたかったけど、アポロが心配だ。
 ぱさっと羽ばたき、ネスさんがこちらに気づいたのを確認して、広げられた表のうえを移動しながら、文字をくちばしで指していった。 

 『こ・れ・か・ら・も・ど・り・ま・す』

 伝わったかな?ネスさんの表情を確認して、五感を自分のもとへもどした。

 「さ、いこっか」

 もういちどアポロの手をにぎり、僕はそう笑いかけた。


―――――――――――――――――――――――――――――――
PL(雪虫)より

アポロといっしょにのんびりお菓子を食べます。

店内でポチと視界共有。ネスさんにそろそろ戻ることを文字表で伝えます。

このあとは
・【七色の調べ亭】へ戻る

・ネスさんといっしょに5番街のアポロの家へ。アイリに会う。

・「秘密基地」へ案内してもらい、危険がなければそれでよし

【各PCの位置】

現在、【黒銀の鍵盤亭】(か広場)にネスさん(すぐにフィンと合流予定)、
広場にはクーガさんも向かい、プリアーシェさんも5番街に移動予定ですよね?
フィンはネスさんとともにアポロを連れて5番街へ移動する予定です。

【お買いもの】

焼き菓子2ガメル+チョコレート3ガメル分+ショートブレッド3ガメル
計 8ガメル分のお菓子を買いました

所持金合計 38ガメル→30ガメル

【ダイス結果】

21:55:59 雪虫@フィン ≫ 予備ダイス1 2d6 <Dice:2D6[5,5]=10>
21:56:12 雪虫@フィン ≫ 予備ダイス2 2d6 <Dice:2D6[5,1]=6>

 プリアーシェ(Lain) [2015/10/22 04:56:01] 
 

>  「あ、ええと、フィン・ティモシーといいます。えと、お察しのとおり、僕も【火竜の手羽先亭】所属の冒険者です。コンチェルティアには観光で来たんですけど......」

 私が声をかけた冒険者の二人組、そのタビットの方が丁寧に挨拶を返してくれた。
 観光にはいい場所だと思う。賑やかで華やか、というのが街の印象だった。

 フィンさんのお仲間はネス――ニェストルという名であるらしい。
 ここで会って、この店には宿を求めて来た、という彼の話を、相槌を打ちながら聞く。

> 「この子は、コンチェルティアに住んでいる地元の子です。街の案内をしてくれています」

 名はアポロ。見ず知らずの冒険者を案内するというのだから、物怖じしない、あるいは人懐こい子なのだろう。
 表情から、なんとなく、前者かな、と当りをつける。

 話が一区切りついたところで、私は仕事の話のために――ここへ来た目的のために、店のカウンターへ向かった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


> 「その話、俺にもやらせてくれよ。
>  いいだろ、アンネ姉さん」

 アンネさんにお話をしているその最中、後ろから声がした。

 振り向くと、さきほどの2人のうちのひとり――グラディウスさんが立っている。

> 「俺はグラディウスだ。
>  実はルキスラの冒険者にも知り合いがいてな――あんたは知らん奴かもしれんが。
>  まあ俺は頭とか働かないけどな、体力だけはあるぜ」

「プリアーシェです、グラディウスさん。
 頼りにさせていただきますね」

 頭がどうかは仕事をしてみなければ解らないけれど、確かに、体力や戦う技術は人一倍だろう。

> 「わかったわ、グラディウス。
>  この件はあなたに任せるわね。
>  それで構わないかしら――プリアーシェさん?」

 ひとり腕利きを貸してくれる、という話であれば断る道理はない。

「お力添えに感謝します、アンネさん」

 私はそう言って頭を下げた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 エンブレムの件は、現物から追うということはどうやら不可能なようだ。
 まあそう簡単な話ではないか、と頭を切り替える。

 そもそもその程度の話なら、街で最も大きいという店の冒険者が頭を悩ますような事件でもない。

 しかし逆に、番号の刻印が削られているというのであれば、やはり犯人はこの店の冒険者ではない、と考えてよさそうだ。

 番号を削り落とすほど周到な人物が誤って現場にエンブレムを残すということは考えにくい。
 つまり、故意に落とされたもの、ということだ。
 この店の冒険者であれば故意にエンブレムを残す理由はない。外部の人間。

 捜査の誤導を狙ったか、あるいは店の評判を落としたかったか、その両方か。

 いま考えても結論は出ない。
 いったん棚上げして別のことを考える。

 花の夜想曲にはクーガさんが出向いている。
 冒険者の店からは助力を得ることができた。

 グラディウスさんと、それからルキスラの冒険者ふたりについても、何かあれば謝礼は出す、という提案だ。

 悪くない結果と言っていいだろう。
 当面の目的は達成できている。

 フィンさんとネスさんはどこかへ出て行ったようだ。
 今夜の宿を求めたということだから、いずれ戻ってくるだろう。

 あとは――そうか。

「アンネさん、ひとつお聞きしたいことがあります。
 あともうひとつ、お願いが」

「カイルさんから、5番街にこういった事件の調査を独自に行う方がいる、と聞きました。
 もしご存知であれば、お名前と、どちらにお住まいかを教えていただけませんか。
 もう1点、さきのおふたりが――あのタビットとシャドウの二人組が戻られたら、私はヴォルディーク邸に泊まっているので、何かあれば連絡してほしいとお伝えいただけますか。
 例の事件について、解決のために動いてくれるのであれば店なりヴォルディーク家なりから謝礼が期待できる、ということも含めて」

 こちらは、と金貨を2枚ばかりカウンターに置く。

「片付けが済んだら店にいる方になにか振る舞ってあげてください」



■PLから

 すみません遅刻しました!
 寝かされた(、、


◆やりたいことなど

  • アンネからの助力として、グラディウスを受領いたします。腕利きヤッター!
  • アンネに、5番街の変人について情報を求めます。
  • フィン&ネス宛てに伝言を頼んでおきます。
  • 協力と情報その他のお礼として100ガメルばかり、店にいる皆様に奢っておきます。
  • 今後は、アンネから5番街の変人の情報が得られればそちらへ、得られなければヴォルディーク邸に一旦戻ってここまでの状況を報告する予定です。
 GM(あんみつ) [2015/10/23 22:58:57] 
 

>「少しの間だけれど 世話になるよ」

二ェストルはフィンと二人分の部屋を一週間分ほど予約を取った。
部屋はそれなりに扱いやすいスペースに整えられていた。
室内の飾りは少なめで機能性を重視している。
冒険者たちがよく使うからこそであろうか。

   *   *   *

いらない荷物を部屋に残して、二ェストルは花開く街へと繰り出す。
目指す先は――黒銀の鍵盤亭である。
それなりにお高い店で、道楽に訪れた金持ちたちが泊まりに使うらしい。

持てる者が金を使う先には様々なものがある。
衣食住は言わずもがな、趣味に付き合い......時には更なる富を求めて。
そして、その中の一つこそ――情報である。

そう考えてきたのか。
二ェストルはこの場所で演奏をして情報でも集めようと試みたのだが。

>「― ッ!!」

無情にも二ェストルのシタールの弦は切れた。
道行く者たちを引き止める演奏などできなかったのだ。
幾人かは二ェストルの方を少しは眺めるも、彼らは止まることなく進み続けた。
話に耽っている者たちも特に関心はなかったようだ。

「やぁ、こんなところで合うとは奇遇だねぇ。
 ――情報を集めるのならばもっとやりやすいところを僕なら勧めるけどね」

二ェストルに話しかけてきたのは――先ほど七色の調べ亭にいたリオンである。
優雅を気取ったその風貌は、どこか嫌味ったらしく聞こえる面もある。

「彼女――プリアーシェさんだったかな?
 ヴォルディークの家から依頼を受けるなんて物好きなことだねぇ。
 あの家は呪われてるという噂があるからね。
 この街の人間はあそこに関わるのを恐れているからね」

ヴォルディーク家は呪われているという噂があるそうだ。
一族が消え、姉が消え、他にも幾つかの不幸が襲ったそうだ。
ただ所詮は噂であり、一笑に付す者も少なからずいるとは言われるが。

「昔とは時代が違ってね。
 かつての偉大なる貢献者だか知らないけれど、今では若い男の当主が一人さ」

あまり彼はヴォルディーク家に対して良い感情を抱いていないようだ。
実はそういった人も少なくはないのかもしれない。
それほど呪いの噂とはこの街にとっては強烈なものであるのだ。

「それで君は彼に協力するのかな?
 当然僕はやる気はないけれどね。
 いずれは消える運命さ――僕の貴重な時間を割くには勿体無いと思うだろう?」

彼は今でもグラディウスとやりあっていた時と気持ちは変わらないようだ。
いずれ過ぎ去る嵐なら立ち向かわず家の中で時間を過ごせばいい。

「それでも、弦を切ってしまった不運な君に一つだけ教えよう」

つかつかと二ェストルのすぐそばに歩み寄り。

「僕も動いていたわけではないけど、少しくらいは知っていてね。
 例えば、4番街で死んだ3人目の犠牲者。
 目を閉じた状態で見つかったんだそうだ。
 だからどうしたって話かもしれないけどね」

   *   *   *

フィンとアポロの二人は菓子屋の前のベンチに腰掛けながらおやつタイムを楽しむ。

>「アポロ、これ、おいしい!」

フィンが素直に感想を漏らすと。

「だろー!
 おれたちにとってのパラダイスなんだぜ、ここ」

隣でチョコレートを齧りならアポロは笑って言う。
その頬には茶色い食べこぼしがついている。

>「......アポロさ、今日から外で遊んでいいってお家のひとに言われたんでしょ?どうしてだか言われた?犯人がつかまったとか、聞いた?」

「だって、最後の事件が終わってからもう一週間だぜ?
 みんな終わったなーて思ってんだ。
 外歩いても全然話とか聞かないしさ」

コンチェルティアに住む多くの人は事件のことなど気にかけなくなってきたのだろう。
もともとそういった陰惨な話題は似合わぬ街だ。
昨日見た公演や好みの踊り子の話などに花を咲かせる方がらしいところだ。

――そんなアポロを残して、フィンは一度ポチを通して連絡をとる。
使い魔とは便利なものである。

   *   *   *

「うまかったー!」

アポロの手にあるのはビスケットの包みだ。
二ェストルに持って行ってあげるのだという。

フィンの目から見えるのは穏やかなコンチェルティアの風景。
巻き込まれた立場の冒険者たち以外は皆活き活きとした表情である。

フィンとアポロが七色の調べ亭まであと半分になるかというところで。
――その事故は起こった。

ちょうど街角を曲がった瞬間。
通りの店をぼんやりと眺めながら、フィンの隣を歩くアポロの体がビクッと揺れる。
彼は勢いよくフィンの方を振り向き――言った。

「フィン!
 ――そこにいたら危ないよ」

その瞬間。
フィンも悟るであろう。
それはタビットという種族が持ちうる超大で鋭敏な感覚――第六感。
フィンたちの左手から、何か黒い影が飛んでくる予感。

それは現実のものとなる。

「あっ」

上の方から女性の小さな悲鳴が聞こえる。
そして、階段から転がり落ちてくる黒い大きな鞄。
既に危険を察知していたフィンはなんなく衝突を免れる。
しかし、鞄はフィンの傍の地面に落下した時の衝撃で思いっきり広がり、中身が溢れ出て舞い上がる。
宙にふわりと舞い広がるのは幾重もの羊皮紙――記されていたのは楽譜か。

「大丈夫でしたか?」

上から黒く長い髪をした女性が階段を駆け下りてくる。

「おい、フィン大丈夫か?」

気づけば、アポロは少し離れた場所から覗き込んでいた。
今のごたついた瞬間につい手を離してしまっていたようである。

「なぁ、怪我とかしてないか?
 薬とかいるか?
 ん、薬?――あああああ!やっべー」

フィンが怪我してないかそばに来て確認しようとしたアポロであったが。
自ら発した薬というワードに著しい反応を示し、大きな声を上げる。
フィンの大きな耳にとっては少なくないダメージであったかもしれない。

「風邪用の薬買って来いって言われてたの忘れてたぜ!
 やべー......このままじゃ怒られんじゃん!
 ごめん、フィンおれ買ってから帰る!」

アポロはそう言って駆け出した。

「あ、おれんち5番街の広場の近くな!
 青い屋根のうちで、隣のオレンジっぽいのがアイリの家だぞ!
 じゃ、ちゃちゃっと買ってくるぜ!」

アポロはフィンの方に向けて大きく手を振ったかと思うと――人ごみの中に消えていった。
冒険者として手馴れたフィンであれば追いかけるのは難しくもないだろう。

そんなフィンの顔にぶち当たってきたのは楽譜の一節。
目の前で鞄の持ち主たる女性が一つ一つ拾い上げている。
見るだけで不憫である。

――そういえばフィンは見ていただろうか。
先ほどアポロが警告した瞬間。
彼の茶褐色の目がやや赤らんで見えた瞬間を。


―――――――――――――――――――――――――――――――

あんみつ@GMより

二ェストルとフィンについて両者進行致しました。

二ェストルはリオンからヴォルディーク家の評判について聞けますね。
あまりよくは思っていないようです。

フィンのダイス一つ目は危険感知判定に使いました。
アポロの警告ボーナス2点を加えて目標値15なので余裕の成功でした。

フィンのダイス二つ目は回避判定に使いました。目標値7でした。
7に足りなかったため、回避動作の際にアポロの手を離してしまいます。

フィンは冒険者レベル+知力ボーナスで目標15の判定を試みてください。
成功すれば、アポロの瞳の異変を察知できます。

二ェストルはお好きな行動をお取りください。
リオンと会話しても適当なところを訪ねても宿に帰っても構いません。

フィンは次の行動を決定してください。
主な選択肢は2つです。

・アポロを追う
・目の前の女性を手伝う

基本的にはどちらかの行動しか取れません。
どちらを取るかはらしい行動を取ればよいのではないでしょうか(*´∀`*)

もし合流したい場合、そのことを明記して頂ければ随時合流を可能とします。

 二ェストル(飛龍頭) [2015/10/25 20:19:58] 
 


>「やぁ、こんなところで合うとは奇遇だねぇ。
> 情報を集めるのならばもっとやりやすいところを僕なら勧めるけどね」


「やぁリオン まだこの街に不慣れなものでね?
 知っていたなら教えてくれればよかったのに」

― いじわるだねぇ。
頬を伝う血を拭い、大して残念そうもなく告げる。

>「彼女――プリアーシェさんだったかな?
> ヴォルディークの家から依頼を受けるなんて物好きなことだねぇ。
> あの家は呪われてるという噂があるからね。
> この街の人間はあそこに関わるのを恐れているからね」

>「昔とは時代が違ってね。
> かつての偉大なる貢献者だか知らないけれど、今では若い男の当主が一人さ」

>「それで君は彼に協力するのかな?
> 当然僕はやる気はないけれどね。
> いずれは消える運命さ――僕の貴重な時間を割くには勿体無いと思うだろう?」

立ち去って構わない状況で話を続けているのは、リオンなりに事件を気にしているのか、
それとも別の意図があるのか分からない。が、その話ぶりからヴォルディーク家に対し
あまり良い感情を抱いていない事は容易に想像できた。

(...街に住む者の印象は 大方そうなのかな......)

いずれにせよ、彼は今でもこの状況を静観する。
という点では変わりないようだった。

>「それでも、弦を切ってしまった不運な君に一つだけ教えよう」
>「僕も動いていたわけではないけど、少しくらいは知っていてね。
> 例えば、4番街で死んだ3人目の犠牲者。
> 目を閉じた状態で見つかったんだそうだ。
> だからどうしたって話かもしれないけどね」

「ふふっ... 何だかんだで世話焼きだねぇ」

内緒話にちょうどいい距離に一気に間合いを詰め。

「...いいよ 君がくれた分は返せるように働いてあげよう...」

少し近すぎたかもしれないが、気にする者はここにはいないだろう。

『きゅぅ、きゅっ!』
「おや? おはよう 今日はおしゃべりだねぇ」

私の用事が終わるまでおとなしくしていた相棒がもぞもぞと顔を出し、
何かを告げようと声をあげる。
まんまるの顔を指先で撫で、辺りを見回せば彫像のように身じろぎすることがなかった
友人の小鳥がぱさりと羽を広げていた。

小鳥のポチは点々と表の上を跳ね、文字をくちばしでつつく。 

>『こ・れ・か・ら・も・ど・り・ま・す』

「うん 呼び出しがかかってしまったねぇ
 また聞きたいことができたら君を訪ねていくよ」

悪戯半分にリオンにキスを投げ、鍵盤亭をあとにした。


―――――――――――――――――――――――――――――――
PLより
こんな金髪の優男(PC含)しかいないところにいられるか!
おれはうさぎさんに所に戻るぜ!

特にイベント的なものもなかったので、
控えめにフリーダムな動きをしてから去りましょう。


次の行動は
【合流するため広場へ移動しつつ、フィンと遭遇した女性を探す】です。

できれば、会いたいのですが、時間的にその場を離れてしまったかな?



■リオンへの真偽判定
19:27:14 飛龍頭@ネス 真偽判定 2d6+7 Dice:2D6[1,6]+7=14

これで実はやる気あった、と分かったらリオンにはツンデレさんという
レッテルを貼り付けておこうそうしよう。

 フィン(雪虫) [2015/10/25 21:50:51] 
 

 どうして外へ出てもいいと言われたのか聞いた僕に、アポロはかじったチョコレートをのみ込んでから、なんでもなさそうにこう言った。

 >「だって、最後の事件が終わってからもう一週間だぜ?
   みんな終わったなーて思ってんだ。
   外歩いても全然話とか聞かないしさ」

 「そう...。そう、なんだ......」

 僕はちょっとだけ考えこむ。
 一週間、か。
 一週間あいだがあいたことで「もう終わった」って思われるくらい、立て続けに人殺しはおきた、のだろう。
 ということは、きっと、なにかの計画の途中でじゃまになった人を順に消していったんじゃない。もう、消してしまいたい人はあらかじめ選ばれていたんだ。
 そして、一週間前に、殺人者は選びだされた被害者を「すべて殺し終わった」。

 達成されたリストを見ながら満足げな殺人者をおもいうかべて、すこしぞくっとした。

 「アポロ、外で遊ぶ時はほんとに気をつけてね?」

 僕はアポロにそっとほほえみかけた。

※ ※ ※

 >「うまかったー!」

 アポロはネスさんへのおみやげを片手にもち、それをぶんぶん振りまわしてごきげんだ。

 「うん、僕が食べたのもすごくおいしかった!」

 僕も手をつないだまま、にっこりした。
 ポチをつうじてネスさんから伝えられたように、僕たちは【奏での広場】をめざしていた。
 通りを歩くひとたちの表情はあかるい。もしかしたら、ほんとうに殺人事件なんて終わってしまったのかもしれない。

 きっと僕の心配のしすぎなんだ。弟みたいな、アポロの手をにぎって笑う。
 この子を家に送ったら、僕もコンチェルティアを楽しもう。どこに行こうかな。1番街の古い神殿、そのあと4番街の劇場かな。
 夜にはどこでごはんを食べよう。ネスさんもいっしょに来るだろうか。

 おだやかな街を、アポロと歩く。
 ちょうど大きな階段を左手に見ながら、通りをよこぎったときだった。
 アポロがびくっと体をゆらし、ふり向いた。

 >「フィン!
   ――そこにいたら危ないよ」

 ふり向いたアポロの瞳は、真っ赤だった。
 
 「えっ?」

 その瞬間、なにかがぴん、と背すじを走った。

 >「あっ」

 だれかの声に続いて、階段のうえから重そうなかばんが大きく跳ねながらこちらへ落ちてくる。
 それに気づいたときは、僕の足は勝手に二歩、そこから飛びすさっていた。

 一瞬前まで僕がいた地面にかばんは落ちた。留め金がはじけて、中から羊皮紙が舞いあがった。
 ひらひらと風に舞う何枚もの羊皮紙のなかで、僕は呆然とした。
 
 今のは―――なに?

 >「大丈夫でしたか?」

 黒髪の女のひとが、階段をかけおりてきた。

 >「おい、フィン大丈夫か?」

 「う、うん。はい、だいじょうぶ...です...」

 アポロの、茶色い瞳を見ながらぼんやりと返事をする。
 今、たしかにアポロは、僕より先に――。 

 >「なぁ、怪我とかしてないか?
   薬とかいるか?
   ん、薬?――あああああ!やっべー」

 きゅうに耳元で大声をだされて、僕は現実にもどった。

 >「風邪用の薬買って来いって言われてたの忘れてたぜ!
  やべー......このままじゃ怒られんじゃん!
  ごめん、フィンおれ買ってから帰る!」

 >「あ、おれんち5番街の広場の近くな!
  青い屋根のうちで、隣のオレンジっぽいのがアイリの家だぞ!
  じゃ、ちゃちゃっと買ってくるぜ!」

 そう言うなり走り出したアポロの背中があっという間に人波にきえる。

 「―――え?ちょっ、アポロ!?ぶっ...」
 
 なにかが僕の顔におおいかぶさってきた。羊皮紙だ。顔からはがしてみると、五線譜が書いてある。
 さっきの女のひとが、おろおろしたようすで一枚ずつ楽譜をひろっていた。
 ああ、どうしよう。......でも。

 「あ、あの、ごめんなさい!」

 女のひとの手元に楽譜を押しつけて、叫ぶ。

 「どなたか!この方を手伝ってください!おねがいします!」

 そしてかけ出した。

 「アポロ!」

 さっきのは、何だ。
 アポロの茶色い瞳にひらめいた真っ赤な色。

 3番街の街並みを歩くひと達の足元を必死になってかいくぐる。

 「アポロ!待ってアポロ!」

 わからない。でも、予感がするんだ。あの子をこのまま行かせちゃいけない。

 「アポロっ!アポロ!」

 まわりのひとが驚いてふり向いたり、飛びのいたりしてる。だれかが取り落とした買い物袋から、果物が石畳をころがる。

 「すみません!」

 何度もひとの足にぶつかりながら、あやまりながら、僕は全力で走った。
 人波の向こうに、日の光をうけてかがやく銀色が見えた。  

 「アポロ...!」

 ぶつかるようにして、その腕にとびつく。

 「......げほっ......はっ...、はぁっ......」

 僕はふるえる手でアポロの手をつかんだ。そのまま、ひざに反対の手をついて呼吸をととのえようとする。胸が、肺がいたい。

 「アポロ......。さっきのなに......」

 かすれる声で問いかける。

 「アポロの目......なに......。どうして、わかったの......あぶない、こと......」

 荒い呼吸のあいだで、ほとんどつぶやくように問いをかさねる。ああ、これじゃだめだ。もっとちゃんと話さないと......。
 けほっけほっ、と咳がでる。痛む胸にゆっくり空気をおくってから、アポロの顔をみた。

 「アポロ...。さっき...君、あぶない、って教えてくれたよね。僕が、気づくよりも先に」

 アポロの茶色い、くりっとした目を見つめた。

 「僕、タビットだから、わかるんだ。危険なことがせまってるときとか、ふしぎと。でも......」

 はぁ、と息をつく。ようやく呼吸が楽になってきた。

 「君は、僕が危険に気づくより前に、それを教えてくれた。どうして、わかったの...?」

 人間族の持つ感覚では、ふつうはありえないはずだ。いったい何がおこったんだろう。
 そして、アポロの瞳におきた変化はなんだったんだろう。
 なんとも言えない、嫌な予感がする。

 ―――はやく、ネスさんとポチに会わなきゃ。     

 僕はもういちどアポロの手をつかみなおした。そしてほとんどひきずるようにして歩く。
 はやく、はやく【奏での広場】へ。それだけを考えて。

―――――――――――――――――――――――――――――――
PL(雪虫)より

急展開に動揺しています。

楽譜のお姉さんは気の毒ですが、アポロがほんものの「予言者」である可能性がでてきた以上、彼をひとりにするわけにはいきません。タビットでさらにとろいうえにソーサラーのフィンですが、全力で走ります。
ここからはネスさん、クーガさん、プリアーシェさんとの合流をめざします。
最初に会えるのは広場にいるはずのクーガさんの予定ですが......。


【判定結果】

雪虫@フィン ≫ アポロの目の異変を察知 目標値15 2d6+5+4 <Dice:2D6[3,3]+5+4=15>

 GM(あんみつ) [2015/10/27 20:23:04] 
 

フィンは決して見逃すことがなかった。
ほんの一瞬アポロが見せた異変を。
彼の目に映っていた赤い太陽のような焔を。
そして、アポロが自分よりも先に危機を知ったという事実を。

――その時の嫌な感覚がフィンの気持ちを逸らせる。
目の前で困っている女性を助けようとするよりも早く。

>「あ、あの、ごめんなさい!」

顔に覆い被さった分の楽譜をしっかり彼女に返し。
薬屋へ駆け出したアポロを体が追いかけていた。

>「どなたか!この方を手伝ってください!おねがいします!」

ただ彼女を無視せず、誰かに助けを依頼するというところはフィンの美点だろうか。
そんなフィンに向けて黒い髪の女性は優しく微笑んだ。

   *   *   *
 
フィンは走る。
我武者羅に何度も人とぶつかりそうになりながらも。

>「アポロっ!アポロ!」

思いっきりアポロに向けて声をかけながら。

「......あれ?フィンじゃん。
 なんでそんな勢いで追いかけてきてんだ?」

その全力さが時の運を動かしたのか。
フィンのかける声にアポロは足をぴたりと止める。

>「アポロ...!」

長い人混みの波をくぐり抜け。
ようやく見つけたその銀色の髪。

フィンはアポロの手をがしっと掴む。
またいきなり離れたりすることのないように。

「わわ、なんだよ急に!
 ......てか、大丈夫かよ、フィン」

アポロはいきなり腕を掴まれて非常に驚いたようであったが。
息も絶え絶えなフィンの様子を見て今度は心配そうな顔になる。
それはまるで年相応の無垢な子供の姿であった。

>「アポロ......。さっきのなに......」

けれどフィンは気づいている。
彼がただの子供ではないことに。

「さっきの?
 なんだそれ?」

アポロの反応は別段わざとらしいものではない。
まるで本当に何も知らないかのようだ。

>「アポロの目......なに......。どうして、わかったの......あぶない、こと......」

>「アポロ...。さっき...君、あぶない、って教えてくれたよね。僕が、気づくよりも先に

>「君は、僕が危険に気づくより前に、それを教えてくれた。どうして、わかったの...?」

フィンは少しずつ息を整えながらアポロに尋ねる。
自分より先に危険を見た赤い目の秘密を。
けれど、アポロはフィンの求める答えはくれなかった。
なにせ――。

「何言ってんだよ、フィン。
 さっきのはフィンが教えてくれたんだろ?
 危なかったよなー、超ビビったぜ」

アポロはあの瞬間のことを覚えていない。
フィンが見たのは白昼夢にすぎないのか?
そうではない。あのシーンは今でもはっきり思い出せるほどリアルであった。
つまり、記憶が混濁しているのはアポロの方なのであろう。
その理由は――おそらくあの時の彼の変異にある。

「それよりさー、おれ薬買わなきゃ怒られちゃうんだよ。
 だから、離してくれって、な!」

引きずられながらアポロはフィンに掴まれた腕をぶんぶんと振った。

   *   *   *
 
二ェストルはリオンの真意を探ろうとする。
けれど、彼の言葉には嘘はなさそうであった。
事件に興味がないというのは本当のことなのであろう。

リオンとの話の途中、ポチに動きがあった。
どうやらフィンとアポロが戻ってくるらしい。

>「うん 呼び出しがかかってしまったねぇ
> また聞きたいことができたら君を訪ねていくよ」

「君とは事件以外のことで出来たら話がしたいね。
 まあ、好きにすればいいさ。
 ――僕は演劇の一本でも見に行くとするかな」

無駄に気障ったらしく優雅に手を振ってリオンもその場をあとにした。

   *   *   *
 
二ェストルが奏での広場に戻ろうとする道中。
黒く長い髪の女性が大きな黒い鞄を持って向かってくるのが見えた。
重そうに一歩一歩鞄を持ち歩きながらこちらへ向かってくる。

すれ違う瞬間。
彼女は二ェストルの顔を見て少し微笑んで会釈した。
誰かと間違えたのかもしれない。
それとも二ェストルの周りの人に挨拶をしたのだろうか。

彼女はゆっくりではあるが、急ぎ足でその場を歩き去っていく。
二言三言くらいであれば話しかけることができるだろうか。

   *   *   *
 
もし、彼らがそのまま奏での広場に歩みを進めるのであれば。
そこにはクーガたちの姿があるであろう。


―――――――――――――――――――――――――――――――

あんみつ@GMより

フィンは無事アポロを捕まえることができます。

フィンは次の行動を選んでください。
主な選択肢は2つです。

・奏での広場に行く
・アポロと薬屋に行く

このシーンではどちらかしか選択はできません。

二ェストルは広場で向かう途中、黒髪の女性と遭遇します。

二ェストルは次の行動を選んでください。
主な選択肢は2つです。

・奏での広場に行く
・彼女と話す

本文にもある通り、二言三言程度であれば広場に向かいながら可能です。
それ以上話す場合は次シーンでは広場に到着できません。

広場に向かうことを選択した場合は、
その時に広場にいるクーガや、
他の広場に帰ることを選択したPCたちと合流できるところまで、
書いていただいて構いません。

 二ェストル(飛龍頭) [2015/10/29 20:50:33] 
 


>二ェストルが奏での広場に戻ろうとする道中。
>黒く長い髪の女性が大きな黒い鞄を持って向かってくるのが見えた。
>重そうに一歩一歩鞄を持ち歩きながらこちらへ向かってくる。

>すれ違う瞬間。
>彼女は二ェストルの顔を見て少し微笑んで会釈した。

「こんばんは 随分と重たそうだけれど大丈夫かい?
 もしよければなのだけど...その荷物、お持ちしましょうか?」




―――――――――――――――――――――――――――――――
PLより
お姉さんのリアクションまちのサブ進行です。


 GM(あんみつ) [2015/10/29 20:52:41] 
 

>「こんばんは 随分と重たそうだけれど大丈夫かい?
> もしよければなのだけど...その荷物、お持ちしましょうか?」

通りがけに二ェストルは黒髪の女性に声をかける。

「ありがとうございます。優しいんですね......。
 でも大事な仕事道具だからあまり他の人には預けたくなくて。
 大したことはないのに......偉そうなこと言って、すみませんね」

彼女の服は白と黒のシックなスタイル。
パッと見ただけでは銀色のアクセサリは身につけていなさそうだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――

あんみつ@GMより

荷物については断ります。

ちらっと見ただけでは銀色のアイテムはもってなさそうですね。

 二ェストル(飛龍頭) [2015/10/29 22:05:21] 
 

>通りがけに二ェストルは黒髪の女性に声をかける。

>「ありがとうございます。優しいんですね......。

> でも大事な仕事道具だからあまり他の人には預けたくなくて。

> 大したことはないのに......偉そうなこと言って、すみませんね」

「いいや、気にすることはないよ
 こちらこそ余計なおせっかいだったからね。
 最近 物騒な事も起きているそうだから、気になってしまってね...」

この街に出入りがあるなら『事件』の事も知っているだろう。

「できるだけ 人通りの多い道を...」

― 気をつけて。


―――――――――――――――――――――――――――――――
PLより
彼女と軽くお話ししたら、広場へ向かいますー。
待ち合わせに遅れたら困るから!

そしておねーさんの声が聞けたので、移動しながら
『レコーディングピアス』を外して、広場で合流後
可能ならエースに「グラディウス」「リオン」「アンネ」
「楽譜のお姉さん」の声を聞いてもらって、犯人たちの声に
似たものがないかを確認したいです。

 フィン(雪虫) [2015/10/29 22:46:16] 
 

人ごみをどうにかくぐりぬけて、その腕をつかんだ。

 >「わわ、なんだよ急に!
 ......てか、大丈夫かよ、フィン」

 アポロだ...。よかった......。

 アポロは目をまんまるにしてびっくりしている。僕は呼吸がととのうまでまともなことをしゃべることができなかった。 
 それでも、さっきのできごとがなんだったのかって聞いた僕に、アポロはきょとんとしたようすでこう言ったんだ。

 >「何言ってんだよ、フィン。
   さっきのはフィンが教えてくれたんだろ?
   危なかったよなー、超ビビったぜ」

 「えっ......」

 ―――覚えていないの...?

 そう問いかけそうになってぎりぎりで踏みとどまる。あのとき、真紅にそまったアポロの瞳...。
 ただ事じゃない。
 僕は自分の勘を信じることにした。 

 >「それよりさー、おれ薬買わなきゃ怒られちゃうんだよ。
   だから、離してくれって、な!」

 アポロは僕がつかんだ手をぶんぶん振りまわした。
 そうは言われても、はなさない。
 僕は広場のほうへアポロをひっぱりながら、考えた。

 そういえば、広場でぶつかったときも先に声をあげたのは僕じゃなくてアポロだった。
 アポロには、どういうわけか「これから起こること」を予測する才能があるみたいだ。
 そして、本人はそのことに気づいていない......。
 家のひとも、アポロ本人に話していない...のか、気づいていない...のか......。気づいていないってことはないような気がするけれど......。
 
 アポロに、さっきの彼自身のようすをくわしく説明するのを僕はためらった。なにも聞かされていないことに理由があるんじゃないかって思えたから。
 
 いま、コンチェルティアはいつもになく物騒だと聞いた。連続殺人だって、おさまってこそいるけれど犯人はまだつかまっていない。
 この子を無事に家へ送り届けよう。そのためには、まずネスさんとポチに会わなきゃ。

 「アポロ、薬屋さんって何番街?お家のひと、だれか風邪ひいてるの?」

 あせる気持ちをおしころして、なんでもなさそうに言ってみる。

 「薬屋さんには、あとでいっしょに行こうね。僕、コンチェルティアの薬屋さんを見てみたいな。アポロだって、ネスさんにビスケット渡すんでしょう?だから、いちど広場で待ち合わせてから、3人でいっしょに行こうよ」

 そこでちょっと息をすう。

 「それから、アポロをお家までちゃんと送っていくから」

 アポロのほっぺたには、さっきかじったチョコレートがついていた。ちょっと歩みをとめて、つないでいるのと反対の手でまるいほっぺたをごしごしこする。
 
 「ふふ、ほっぺたにチョコレートついてる」
 
 そんなやりとりをしながら、僕たちはふたたび【奏での広場】に足をふみ入れた。

 ぐるっとまわりを見回す。ネスさん、ポチ......。来てるかな。
 僕がなんとなく抱いている不安がアポロに伝わらないように気をつける。

 「ちょっと、ベンチで待とうか」

 そうアポロに言って、広場の片すみのベンチを見た。もう座ってるひとがいる。あと、寝てる...ひと。なんだろうこの光景。
 ベンチに座ったひとは、くわえ煙草で荷物らしきものをがさごそあさっていて......。派手なロングブーツといい、足を開いた座りかたといい、なんていうかこう......。
 こわい。
 僕はいまの光景が目に入らなかったことにして、別のベンチをさがそうとした。けど、ふとひっかかる。

 アポロの手をにぎりなおして、そのベンチにちょっと近寄ってみた。
 ベンチに寝そべっているひとからものすごいいびきが聞こえてくる。そしてその隣で気にした風もなく、僕たち冒険者もよく使う背負い袋に手をつっこんでいるのは......。

 「く、クーガさん......?」

 間違えようがない。短い黒髪に赤い石の首かざり、煙草の煙をすかして見えるめずらしい銀色の瞳。
 ルキスラの冒険者、クーガさんだった。 

 なんでクーガさんが、ここに......?

 っていうのも、へんなんだけど。僕だって、ルキスラから(温泉の帰り道に、だけど)コンチェルティアに来てるんだもの。クーガさんも旅行なのかも。
 そこまで考えたとき、【七色の調べ亭】で出会った【火竜の手羽先亭】所属だという彼女の顔が思いうかんだ。たしか...プリアーシェ、さん。

 コンチェルティアで、どうしてルキスラの冒険者が動いているんだろう?

 おなじ疑問がまたうかぶ。うかぶと同時に問いかけていた。

 「クーガさん、こんにちは......。あの、えっと。どうか、したんですか?あ、どうか、っていうのはその、コンチェルティアで、仕事ですか?何かあったんですか?」

 仕事、と口に出してから思わず、「どっちの仕事だろう」なんてべつの疑問が頭をもたげるけど、きっと冒険者の仕事だろう。そこはきっとだいじょうぶ。
 
 「僕はユーレリアまで行った帰りに、コンチェルティアに寄ってみたんです。いろいろ見てまわろうと思って...。あ、この子はアポロっていいます。地元の子です」

 それから、さっきアポロが見せたふしぎな力のことを話そうかと思ったんだけど、アポロ本人にも聞かせるのはためらわれる。
 だけど、僕としてはできればぜひクーガさんの意見を聞きたい。
 なやむ僕の目に、クーガさんのベルトにつけられたアルケミーキットがうつった。そうだ。

 「クーガさん、この子......、すごくふしぎな才能があるみたいで。『これから起こること』を見とおす力があるんじゃないかって思うんです。本人気づいてないみたいなんですけど」

 そう、魔動機文明語で言った。

 つないだ手をちょっと引きよせて、それからはたと思いいたる。
 くり返すけど、クーガさんの目つきとか、見た目はちょっと......こわい。

 「あ、あああの、アポロ、あのね?こっ...このお兄さん、こわくないから!見たかんじはその、ちょっと...だけ、ちょっとだけね?ちょっとだけこわいけど、す、すごく優しくていいひとだから!」

 僕はあわてる。いろんなことを口走りながら、アポロのようすをうかがった。

 「......クーガさんは、僕の冒険者仲間なんだ。信頼できるひとだよ」

 それだけははっきり言える。そうアポロに言って、クーガさんを見て、それからもういちどアポロを見た。


―――――――――――――――――――――――――――――――
PL(雪虫)より

フィンの次の行動は【広場へ向かう】です。
アポロの手ははなしません。薬屋さんには必要とあればあとでいっしょに行きます。

まずはクーガさんと合流です。合流できてよかった......。

コンチェルティア内部メンバーは全員魔動機文明語が話せることに気づきました。
密談がしやすいアドバンテージ、に、なるかな......?