1-真の魂よ響け!

 GM(あんみつ) [2016/06/21 23:53:12] 
 

――開始数分前。
4番街のある劇場には多くの人が集まっていた。

会場となった劇場はさほど大きくはないが......。
だからこそ後方でもリアルな音楽を感じられるとも言える。

集まっている客の姿を伺えば、比較的若者の姿が多く見えた。
観光客だろうか、他地方の装いをしている者もいれば。
冒険者らしく鎧を身に纏った者もいる。

そんな人の集った劇場の中に。
一人、また一人と姿を現す者たちがいる。

   *   *   *

シィノヴィアは一人、この聴衆の群れに飛び込んだ。

彼女の場所は前の方だろうか。
それとも中心だろうか。
もしかすれば後方かもしれない。

シィノヴィアがふとステージの方に目をやれば。
こっそり裾から顔を出して様子を伺っていたスラップと目が合う。
ひらひらと揺れる手......彼の後ろから襲いかかる拳の一撃。
まともに直撃されたスラップは頭を抱えながら引っ込んでいく。
おそらくリズムがやったのだろう。

「シィノヴィアさん、こちらにいらしたんですね」

いつの間にか傍にはネージャの姿があった。
彼女は客席から見るのだろうか。

「いつもはこちらから見ることはないんですけどね。
 彼らの最初のステージですから。
 是非とも正面から見たいと思ったのです。
 ......お隣、ご一緒してもよろしいですか?」

   *   *   *

「なかなかに大盛況ね。
 早めに買っておいてよかったわ」

カプリとデイジーは二人でホールの中へと至る。
デイジーは緩やかに人並みを避けて進んでいく。
カプリにも同じ芸当はできるだろう。

踊り子並みにカプリが動けるのか。
冒険者並みにデイジーが動けるのか、果たして。

「私たちの場所はあそこの方かしら?」

二人が向かうのは前の方だろうか。
それとも中心だろうか。
もしかすれば後方かもしれない。

   *   *   *

「人いっぱいだな、すっげー楽しみだぜ!」

「ちょっと、アポロあんまり恥ずかしいことしないでよ!」

入った瞬間から元気なアポロとアイリと共にティキは入ってくる。

「おれ、前のほうがいい。
 後ろじゃ見えないし!」

「子供みたいなこと言わないの。
 私も見えないけど......」

そんな感じで話している二人から一瞬目を離すと、ティキはヴェンデルベルトを見つける。
彼もチケットを入手して来たのだろう。

「あ、ヴェンだ!」

ヴェンデルベルトもアポロやティキたちの姿を捉えることができるだろう。
同じ場所に集まってステージを楽しむこともできるはずだ。

   *   *   *

開演の時間。
ステージの幕が上がり姿を現したのは五人の男女。

最初に姿を見せたのは赤髪の気だるげな女性。
その後ろから歩いてくるのは小柄な青髪の少年。

続いて入ってきたのは帽子をかぶった元気な少女。
そして手を振りながらやってくる銀髪の青年。

最後に姿を現したのは、白いフードを被った男性だった。

――冒険者たちにはそれぞれ見覚えがあったりなかったりするだろう。

「今日は......俺たちのステージに来てくれて嬉しい。
 俺たちは......その、そうだな......」

最初に口を開いたのは白いフードの男性だった。
ただ少し何を言おうか考えているようだ。
緊張しているというよりは彼はそういう性格なのだろう。

「だー、もう、ヴォイスはそういうの向いてないんだから、オレに任せな。
 観客席にいるガールからレディ、マダムまでみんな。
 ――愛してるぜ」

そんな彼の言葉を遮ったのは銀髪の青年だった。
彼は大きな身振りをしつつ言葉を紡ぎ、最後にステージ上から客席に投げキッス。
嫌いな人は嫌いだが、好きな人は好きなタイプである。
客席の中から黄色い声が上がる場所もあった。
......ちなみにアイリはぽわっとさせた側である。

「どうでもいいけど......早く始めない?」

「そうそう、スラップのナンパショーじゃないんだし」

「お願いできますか、ヴォイスさん」

三人に急かされて再度主導権はヴォイスと呼ばれたフードの男性に移る。
彼は数歩前に出て、顔を上げる。

「今日は俺たちの......この街での最初のステージだ。
 俺たちのことをあんたたちがどこまで知っているかは知らない。
 あんたたちが俺たちをどこまで受け入れてくれるかもわからない。
 それでも......俺たちは伝え続けるつもりだ。
 真の魂を音に乗せて、だから聞いてくれ......!」

彼の声を合図にそれぞれのメンバーは何かを取り出す。
それは小型の球型の魔動機。
魔動機に触れれば、魔動機は変形し本物の姿を現に顕す。

一つはまるで鍵盤楽器のようで。
一つはまるで複雑な太鼓のようで。
そして弦楽器のような魔動機が三つ姿を現した。

知識のあるものならば、かつて魔動機文明時代に流行した楽器であるとわかるだろう。
マナを使い音を歪ませたり強くしたりできるのだ。
彼らは今の時代に残されたそれらの楽器で音を作り出すようだ。

「行くぞ......!」

最初の曲の前奏が始まる。
それは、とても力強く、勢いよく。


―――――――――――――――――――――――――――――――

あんみつ@GMより

ステージのシーンからはこちらに。
ここからは全員がこちらのカテゴリにご記入ください。

残りはステージシーンとエンディング。
あともう少しだけお付き合い宜しくお願い致します。

PCたちはそれぞれ別のタイミングで入っておりますが。
記載されていない部分で相互に見つけるのは構いません。
またホール内の場所についてもお好きな位置をどうぞ。

【分類:道具】【魔動楽器】を登録しておきます。
【魔動楽器】については見識判定を試みることができます。
目標値は13。成功すれば詳細がわかります。

他の部分についてはご自由に赴くままにどうぞ!

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 シィノヴィア(紫乃) [2016/06/23 22:41:50] 
 

少し早めに来たつもりだけれど、すでにそれなりに人がいた。
このような催しに来るのは初めてなので、勝手がわからない。
受付の人に席を聞いて、どうにか座れた。
わりとステージに近い。

目の端に銀色が見えたので顔を向けると、舞台袖のスラップ殿がいた。
向こうもこちらに気づいたらしく、手をふってきた。
あ......。今のはリズム嬢だろう。
シィノが手をふり返したのは見えただろうか。

>「シィノヴィアさん、こちらにいらしたんですね」

「舞台のほうへいなくてもいいのですか」

>「いつもはこちらから見ることはないんですけどね。
> 彼らの最初のステージですから。
> 是非とも正面から見たいと思ったのです。
> ......お隣、ご一緒してもよろしいですか?」

うなずいて肯定する。

帝都に近い部類に入るだろうこの街で公演をするまでには、
多くの手回しが必要だったに違いない。
宿や劇場の手配もそうだが、まず蛮族である彼らがまともに人族と話せるまでの
信用を得るまでには、長い時間が必要だったのではないか。

>「今日は俺たちの......この街での最初のステージだ。
> 俺たちのことをあんたたちがどこまで知っているかは知らない。
> あんたたちが俺たちをどこまで受け入れてくれるかもわからない。
> それでも......俺たちは伝え続けるつもりだ。
> 真の魂を音に乗せて、だから聞いてくれ......!」

ヴォイス殿の、静かだが率直な言葉は、耳に心地良い。
シィノの鼓動は、いつの間にか期待に鳴っていた。

 ティキ(キャスパー) [2016/06/23 23:42:00] 
 

>「人いっぱいだな、すっげー楽しみだぜ!」

>「ちょっと、アポロあんまり恥ずかしいことしないでよ!」

「ほら、二人とも騒がない。笑われるよ」

もうすっかり仲直りは済んでいるようだ。二人は他愛無く言い争っているものの、互いに遺恨なく今この状況を楽しめている。

>「おれ、前のほうがいい。
 後ろじゃ見えないし!」

>「子供みたいなこと言わないの。
 私も見えないけど......

「なら前の方へ行こう。席が空いてなければ演奏の間、二人とも担いでいてあげるから」

そう言って空いてない席を探すと、観客の中にヴェンさんを見つけた。そういえば、一緒に行動していたはずのアポロがチケットを持っていたわけだから、納得だ。

まあ、アポロの二枚目は無駄になってしまったわけだけど。

>「あ、ヴェンだ!」

アポロも気づいた様子だった。私もそちらへ手を振って、前の方へ移動する。

***

さて。

ぐるりと会場を見回してみて、罠らしいもの、仕掛けなどがないらしいとは判断してみた。とすれば後は、その演奏を見て判断するしかあるまい。

>「今日は......俺たちのステージに来てくれて嬉しい。
 俺たちは......その、そうだな......

あれがリーダーだろうか。喋りなれないのだろうか、少し喋り方がたどたどしい。

>「だー、もう、ヴォイスはそういうの向いてないんだから、オレに任せな。
 観客席にいるガールからレディ、マダムまでみんな。
 ――愛してるぜ」

 

うわあ。やっぱりいるんだ。

ひとまずアレは置いておいて、アイリはやっぱりぽわんとしている。

アポロの反応が少し気になって、こっそり顔をのぞき込んでみた。

 

>「今日は俺たちの......この街での最初のステージだ。
 俺たちのことをあんたたちがどこまで知っているかは知らない。
 あんたたちが俺たちをどこまで受け入れてくれるかもわからない。
 それでも......俺たちは伝え続けるつもりだ。
 真の魂を音に乗せて、だから聞いてくれ......!」

 

「......」

 

演奏が始まった。

力の漲るような演奏が。


PL

前の席に移動します。

23:31:23 キャスパー@ティキ 見識 2d Dice:2D6[2,6]=8

 カプリ(一葉_3) [2016/06/24 01:01:42] 
 

> 「私はデイジー・セレナディア。
>  あなたのことは知ってるわ。
>  チケットなかなか売れたみたいね。
>  おかげで、この街の状況がひとつ変わった。
>  良い方に向いたか悪くなったかはわからない......でも面白くなった気はするの」

「面白くなったなら、それが一番よ。きっとね」

 少なくとも私にとってはそうだ。
 退屈ほど唾棄すべきものはない。

> 「なんて、長話をしていたらせっかくの舞台を見逃しちゃうわね。
>  行きましょう、荒々しい彼らの歌を聞きに」

「ご随意に、スィニョリーナ」


 * * * * *


> 「なかなかに大盛況ね。
>  早めに買っておいてよかったわ」
> 「私たちの場所はあそこの方かしら?」

「そうみたいね」

 鬱陶しい人混みを縫うように進みながら、紙切れをちらと見やる。
 位置はステージから近くもなく、遠くもなく。
 私の背丈ではステージはあまり見えないけれど、構わない。
 私は彼らの音楽を聴きに来たのだから。

 椅子に深く腰掛けると、目を閉じてそっと手を組んだ。

> 「今日は......俺たちのステージに来てくれて嬉しい。
>  俺たちは......その、そうだな......」

 ステージの方から声が聞こえる。
 目を閉じたままくすりと笑い、誰に言うでもなく私は小声で呟いた。

「"この世界は全て舞台"
 "されば人間悉く役者に過ぎぬ"
 "世間という舞台の袖を忙しく往来し"
 "唯各々の役割を演じているだけに過ぎぬ"」

> 「行くぞ......!」

 ステージから音が溢れ出す。
 それはまるで、楽器に封じ込められた力が、鎖を引きちぎって放たれるように――


============================
PL@一葉より:
 たまには暴れないでもいいかなって(''*

 ヴェンデルベルト(柑橘) [2016/06/25 12:05:39] 
 

花束を抱いて劇場に入る。同じく楽団の公演を見に来たのであろう人々は比較的若いと言える。
彼らはトゥルー・ソウルズが蛮族であると知っているのだろうか。そしてそれでも構わないと思っているのだろうか。
そうであるならば、知能を持ちこの世界に生きている者に境界などないのかもしれない。

蛮族が人を襲いさえしなければ、私達が分かりあえるのかもしれない。
けれど、それは遠い遠い話のように思えた。


◇ ◇ ◇


会場に入り、舞台が見えるよう前の方へと進んでいく。
私はこのような体躯であるから、そうしないと前の座席で舞台が見えない、と言う事が起こりうるのだ。
低身長者用のクッションなどあれば借りたいところだが、などと思っていると、聞き覚えのある声がした。

「人いっぱいだな、すっげー楽しみだぜ!」
「ちょっと、アポロあんまり恥ずかしいことしないでよ!」

振り返ってみるとアポロ君とアイリ嬢がこちらにやってくるのが見えた。
良かった。どうやら許しを得たらしい。

「あ、ヴェンだ!」

「はいこんばんは、先ほどぶりですね」

どうやらティキも一緒に来たらしい。彼女は今日アイリ嬢と共にいたと言い、どうやら仲良くなったようだ。

「折角なのでご一緒してもよろしいですか?」

私の問いは歓迎を持って迎えられ、4人並んで舞台を見上げることになった。


◇ ◇ ◇


舞台の幕が上がる。立て板に水とはいかないものの、気の合った掛け合いは会場に笑いを呼んだ。
そうして取り出したのは魔動機。あれは確かはるか昔に流行った楽器のはずだ。現存しているものがまだあったとは。
あとで触らせて......いや、贅沢は言うまい。近くで見せて貰うことは出来ないだろうか。

知識欲にかられそうになった私の思考は、次の瞬間力強い空気の振動にかき消されたのだった。



遅くなりました!!
00:53:51 柑橘@ヴェン 【魔動楽器】 2d+10 Dice:2D6[4,4]+10=18
知ってたイェーイ。しかし魔動楽器の項目が見つかりません!どこだぁああ!!

 GM(あんみつ) [2016/06/25 15:04:38] 
 

リズムのビートが鼓動を鳴らし。
スラップの弦がサポートする。

プレイヤの鍵盤は軽やかに弾け。
ソリッドの楽器は力強く音を揺らす。

四人の演奏に合わせて弦を鳴らしながら。
歌い叫ぶのは、ヴォイス。

彼らの奏でる音楽は強い怒りのようで。
激しい悲しみのようで。
燃え上がる情動のようで。
確固たる意志のようでもあった。

それはヴォイスの乗せる言葉からも感じられることだ。

――奏でられること数曲。
あと一つラストナンバーを残したところで事件は起きた。
それは偶然であったか、運命であったかはわからない。

最後の演奏に入る前。
しっかりと被っていたはずのヴォイスのフードがズレ落ちたのだ。
そして、蛮族......ドレイクである証の角が顕になる。

「あ、角だ」

ティキとヴェンデルベルトの傍でアポロが言う。
アイリは少し驚いているようだ。

動じない者は動じることはない。
他地方からやってきた者たちは彼らの素性を既に知っているのだ。

一方で動じる者も当然いる。
後ずさりする者。
小さく悲鳴を上げる者。
冒険者らしき、身構える者。

様々な反応をする観客を見て、ヴォイスは首を振って。

「仕方ないか......。
 いいよな......?」

角をもはや隠すことなくヴォイスは仲間たちを振り返る。
彼らはそれぞれに頷いて見せた。
ソリッドは瓶をひとつ取り出し、他の仲間たちも各々動く。

   *   *   *

一瞬のブラックアウト。
その中で強く赤く光るものがあった。
瞳だ......それはスラップの瞳だった。

再びの明転の中。
彼らの姿は大きく変わっていた。

リズムは大きな帽子を取り払ったことで、立派な角が表に出る。
プレイヤの足は蛇の尻尾へと変わり。
ソリッドの姿は青年から青い毛並みの狼へと変貌していた。

ヴォイスも含め、彼らの本当の姿である。

「これが俺たちの本当の姿だ。
 あんたたちが恐れ......嫌う蛮族っていう奴だ。
 俺たちはあんたたちの敵になるつもりはない。
 だが......この姿で幾ら言葉にしても簡単には伝わらないとわかっている。
 言葉なんて......幾らでも嘘を吐ける」

ドレイクとしての姿を隠すことなく、ヴォイスは静かに語る。
客席からは逃げ出すかのように去っていく者もいる。
戦える者たちの目もまた鋭い。

「だから俺たちが言葉じゃなくて、音で伝える。
 音楽は嘘を吐かない。
 俺たちの真の気持ちを届けられる......そう信じている。
 すぐに届かなくとも俺たちは奏で続ける。
 届くまで......倒れるまで......。
 あんたたちが俺たちをどう思っているか知らないし、知る必要もない。
 ただ聞いて欲しい、俺たちの魂の音楽を......!」

ヴォイスが弦を弾き、魔法の音が高く鳴る。

「つうわけだ、オレたちからの愛の詰まった最後の一曲、聞いて行ってくれよな!
 ......しょうがねえから野郎共にもサービスしてやるよ。
 愛は入ってないけどな!」

「うん、最後なんだし全力で盛り上げていくよ!
 邪魔な帽子もなくて動きやすいしさ」

「あんまり暑苦しいのは......面倒臭いんだけど......。
 仕方ないから付き合ってあげる」

「よーし。
 オレ様も燃えてきたぜ!
 行くぞ、うおおおおおおおおおおおおおおお!」

仲間たちも声を上げる。
ついでにソリッドは獣のように吠える。

「聞いてくれ......これが俺たちの魂だ!」

   *   *   *

最後の一曲は今までのどれよりも熱く激しかった。
それは確かに蛮族故の暴力性や激情、闘争心として捉えられなくもない。

彼らはそれを否定はしない。
蛮族でありながらも伝えられることを探しているのだ。

「これが俺たちの音楽だ。
 機会があれば......またこのステージで歌いたい。
 いや......歌ってみせる。
 どんな壁が俺たちの前にあろうとも挑み続けていく。
 また、あんたたちに会えることを楽しみにしてる」

楽器を元の形状に戻し、彼らは一礼する。
それぞれのパフォーマンスを取りながらステージを後にした。

劇場は完全なる拍手喝采とは当然行かなかった。
だが、拍手の音は決して小さくもなかった。

   *   *   *

「なんとか......無事に終えられました。
 私も一安心です。
 これから少しは大変かもしれませんが......私も彼らには負けてはいられません。
 諦めず挑み続けていかねばなりませんね」

シィノヴィアの隣でネージャは語る。
まるで母のように彼女はステージから去る面々を見守っていた。

   *   *   *

「教科書みたいな演奏ばっかりだと飽きるから。
 たまにはこんな暴力的なのも悪くないわね」

デイジーは拍手こそしないが、それなりに満足そうであった。

「それにしても、また一つ面白そうなものが出てきたわね。
 蛮族の楽団......いったいこの街でどうなっていくのかしら」

ふふ、と楽しそうに口角を上げながら。
デイジーは去っていこうとする。
もちろんカプリが追随しても阻みはしないだろうが。

   *   *   *

「あの人蛮族だったんですね。
 ちょっとショック。
 でも、やっぱりかっこよかったな」

最後の演奏を聞き終えた後、アイリは拍手しながら感想を漏らす。
当の本人は去り際に手を振って、ウィンクして、投げキッスしてのサービス三昧。
かっこいいかについては、なんとも言い難いところである。

「フードの兄ちゃんも角隠してたんだな。
 でも、兄ちゃん蛮族だけどいいやつだったぞ。
 な、ヴェン?」

アポロは拍手し終えた後、ヴェンデルベルトの方へ振り向いた。

   *   *   *

かくしてトゥルー・ソウルズの初回公演は幕を閉じる。
冒険者たちはそれぞれ、各々の場所を目指すことだろう。


―――――――――――――――――――――――――――――――

あんみつ@GMより

進行ですー!
とりあえずステージが終わるところまで。
演奏についてはハードでヘヴィでロックでメタルな感じです、たぶん。

次回進行において、エンディングを投稿しようと思っております。
その際やっておきたいこと、行っておきたい場所などございましたら、
どうぞ今まで通り行動予定として明記しておいてくださいませ。
もしなければ、完全私個人のチョイスでエンディング投稿を行わせていただきます。

また、エンディングに向けて名誉点の処理を先に済ませておこうと思います。

シィノヴィア、カプリは剣のかけら二つ分相当、2D6のダイスをお振りください。
ティキとヴェンデルベルトで二つ分相当、合計2D6のダイスを二人で振り分けてください。

その結果が今回獲得できる名誉点となります。
ティキとヴェンデルベルトの結果は合算します。

他にもし何かございましたら、どうぞ!

 ティキ(キャスパー) [2016/06/27 17:39:53] 
 

全ての演奏が終わった。

途中、彼らの正体は露見した。しかしそれでもパニックまでは起きず、公演は最後まで完走したのだ。

私自身の彼らに対する評価は......集まった人間の熱気とは違う、彼ら自身から発せられる熱のようなものを感じた。「本物」であったと、そう思う。

―さて、どうするか。

演奏は素晴らしいものだったが、一部の人間はそれ以上に蛮族という存在を受け入れられなかっただろう。受け入れられたものとどちらが多かったのかはわからないが......

「......」

しばらく考え込んでいると。

「あの人蛮族だったんですね。
 ちょっとショック。
 でも、やっぱりかっこよかったな」

「......そうだね。蛮族だろうが何だろうが、いいものはいい。決めたよ、アイリ」

***

「まだ人がたくさんいるから、はぐれないようにしなきゃね。ほらアイリ、アポロ」

両の手で、小さな二つの手をそれぞれ取った。

もう日も落ちているだろう。この二人をちゃんと家まで送り届けて、それで私の「こちらの役目」は終わりだ。そうしたら次は、もう一つの役目が残っている。

「私、明日の朝には発つよ。帽子は大事にしてね、私もそうする」

二つの手を引いて歩き出す。

ふいに、荷物袋の中に、食糧と一緒にいつものように飴玉を入れているのを思い出した。帰る道すがらみんなで、飴でも食べながら帰ろうか。


PL

行動選択

・アイリとアポロを家まで送り届けます。飴もあげます。食事代含め、金銭の類は固辞します。

・アイリたちと別れた後、グローリアへ報告に行きます。演奏は本物であったこと、リピーターのファンがいること、正体を知ってなお受け入れる人も少なくなかったということ。以上を伝えた上で、彼らが街に害を及ぼすことはないと判断したと報告します。

・すべてを終えた後で、最初の目的通りテンペストに会いに行きます。お土産のいいワインを渡して退屈解消のお話します。話せることは、古竜と友達になったお話、ニコデムスの成長、蛮族の楽団、そしてグローリアに会ったということなどでしょうか。

23:13:07 キャスパー@ティキ 名誉点ダイス 1dDice:1D6[4]=4

 ヴェンデルベルト(柑橘) [2016/06/28 20:12:15] 
 

椅子に座ったまま聞く事が間違っているかのような音楽だった。
これを音楽と呼んでいいのかすら、私には分からない。
けれど、彼らが『音を楽しんで』いるのは間違いが無かった。


◇ ◇ ◇


少しのハプニングはあれど、公演は無事に終わった。

「フードの兄ちゃんも角隠してたんだな。
 でも、兄ちゃん蛮族だけどいいやつだったぞ。
 な、ヴェン?」

「えぇ、そうですね。良い人でした」

子供たちは素直にこの状況を受け入れたようだ。流石芸術の街の子である。
大事なことさえ同じなら、必要以上に恐れたりしないところはたいへん好ましかった。


◇ ◇ ◇


「まだ人がたくさんいるから、はぐれないようにしなきゃね。ほらアイリ、アポロ」

「ではよろしくお願いしますね、ティキ」

アイリ嬢とアポロ君はティキが送ってくれることになった。
私はと言うと劇場から出る人の間をぬって、奥へと進む。幸い誰にも見咎められることはなく、その場所へとたどり着いた。
もしかしたら私が持っているこの花束が、通行券の代わりになってくれていたのかもしれない。

コンコンコン。

ノックをして、しばし待つ。

まずは花束を渡して、公演の感想を伝えなければ。未だに躍動するこの鼓動を、知って貰うために。
そうして落ち着いたら、あの楽器を触らせて貰えないか聞いてみよう。

あぁ、欲を言えばドレイクの角を触らせて貰いたいし、ラミアの鱗も触りたい。
青い狼の毛並みは如何ほどのものであろうか。

彼らが如何にして知り合ったのか。どうして楽器を持つことになったのか。何故、どうして、どうやって。

私は好奇心のままに、彼らにもう一度会いに行ったのだった。



行動予定
公演終わったトゥルーソウルズに会いに行きます!
花束渡して感想伝えてサイン貰ってあわよくば楽器とか角とか鱗とか毛並みとか触りたい触りたい!そして話を聞きたいのです!
あ、パンフレットとかありますかね!あったらほしいな!

で、ティキと一緒にテンペストに会いに行ってお話ししましょう。こんな魂を持った人たちがいたんだよ、と!

帰ったら日記を書きましょうー
20:11:08 柑橘@ヴェン 筆写人 トゥル―ソウルズの情景描き起こし 器用でいいかな? 2d+5+2 Dice:2D6[5,3]+5+2=15

20:11:19 柑橘@ヴェン 名誉点 d Dice:1D6[2]=2

 シィノヴィア(紫乃) [2016/06/28 21:22:28] 
 

あっという間に時は過ぎ、次が最後のようだ。
だが、無事に終わるというわけにはいかなかった。

ヴォイス殿のフードが落ち、客席がざわめく。
外へ出ていった者もいるが、街の上層の者には蛮族であることの話を通していたはずなので、
そういう方面での大ごとにはならないだろう。

さて、どうするのだろうか。
ステージの5人と、隣のネージャ嬢を見守る。

>「聞いてくれ......これが俺たちの魂だ!」

最後の曲が始まった。

 ―*―*―*―

音がぶつかってくる。
今回のステージの、どの曲よりも激しく、荒々しい。
ともすれば、飲み込まれてしまいそうなほどの。
むき出しの生命のような音だった。

>「これが俺たちの音楽だ。
> 機会があれば......またこのステージで歌いたい。
> いや......歌ってみせる。
> どんな壁が俺たちの前にあろうとも挑み続けていく。
> また、あんたたちに会えることを楽しみにしてる」

ステージの端に消える5人に、大きな拍手を。

>「なんとか......無事に終えられました。
> 私も一安心です。
> これから少しは大変かもしれませんが......私も彼らには負けてはいられません。
> 諦めず挑み続けていかねばなりませんね」

「信頼を得るには時間がかかるものです。
 大丈夫。"情"が、人族社会の甘さであり、強さだから。
 内に同じ心をかかえているのなら、きっと、共鳴する。
 だから、奏で続けてください」

足もとに置いていた花籠を出して、ネージャ嬢へさし出す。

「ささやかですが、祝いです。
 今夜はお誘いいただき、ありがとうございました」

シィノが選んだ花を詰めてもらった花籠は、とてもにぎやかなものになった。

澄んだ空色の花。
大輪の黄色い花。
華やかな白い花。
凛とした青い花。
艶やかな赤い花。
かわいらしいオレンジの花。

普通見かける花束のような調和など一切ないけれど、互いの色を映しながら
ますます鮮やかに咲く姿からは、花そのものの命の強さを感じられ、悪くないと思う。


――――PL――――
21:21:16 紫乃@シィノ ≫ 剣の欠片 2d6 <Dice:2D6[3,1]=4>

 カプリ(一葉_3) [2016/06/28 23:39:23] 
 

 演奏の途中、メンバーのフードがずれ、角が露わになった。
 遠くない所から小さく吸い込むような悲鳴すら聞こえた。

 数多居る観客の全てが彼らのそれを承知した訳では当然ないだろう。だが大多数は知っていたか、もしくは感付いていたか、多少の動揺は見えれど公演は混乱の坩堝と化すような事はなかった。

> 「仕方ないか......。
>  いいよな......?」

 そもそもそれは事故だったのか、はたまた。
 わずかな瞬間だけ照明が落とされ、再び光が戻った先には、姿を偽らずに晒す彼らがいた。

 紛れもない、蛮族――打倒すべき種族。

> 「これが俺たちの本当の姿だ。
>  あんたたちが恐れ......嫌う蛮族っていう奴だ。
>  俺たちはあんたたちの敵になるつもりはない。
>  だが......この姿で幾ら言葉にしても簡単には伝わらないとわかっている。
>  言葉なんて......幾らでも嘘を吐ける」
> 「だから俺たちが言葉じゃなくて、音で伝える。
>  音楽は嘘を吐かない。
<  俺たちの真の気持ちを届けられる......そう信じている。
>  すぐに届かなくとも俺たちは奏で続ける。
>  届くまで......倒れるまで......。
>  あんたたちが俺たちをどう思っているか知らないし、知る必要もない。
>  ただ聞いて欲しい、俺たちの魂の音楽を......!」

 そして、彼らの奏でる音の激しさは一段と強くなり。
 万雷とは言わずとも、十分な拍手を以て、その幕は落とされた。


 * * * * *


> 「教科書みたいな演奏ばっかりだと飽きるから。
>  たまにはこんな暴力的なのも悪くないわね」

 デイジーと私は拍手に加わりはしなかった。
 だけど、それは気に召さなかったという理由では決してない。

> 「それにしても、また一つ面白そうなものが出てきたわね。
>  蛮族の楽団......いったいこの街でどうなっていくのかしら」

 席を立ち去っていくデイジーを追う事も呼び止める事もせず、椅子に腰掛けて目を閉じたまま、そんな言葉を耳の端に捉えた。
 少しの間だけそうして時間を過ごし、移動する人の波が落ち着く頃に、私はステージを後にした。


 * * * * *


 暗くなったコンチェルティアの街を、マフラーを鼻まで上げてマントをくるりと身体に巻き付け、一人で歩く。
 トゥルー・ソウルズの目指す道は厳しい道になるだろう。人族と蛮族の確執は、もはや個の動きでどうこうできるものではない程に深い。

 だけど。
 だからと言って、その道を往くのが愚かであるとは毛頭思わない。
 今ここにある自分がそうすべきだと信じたなら、例え正道でなくともそうする。
 それこそが自由であり、個が個である証明に他ならない。

 そう思うからこそ、進む手段も方向も全く違うとは言え、私は彼らが嫌いではない。
 今までも、今現在も、そしてこれからも、きっと様々な壁が彼らの前に立ちはだかるだろう。
 彼らがその壁に屈せず、自分たちのエゴを貫き続ける事を、私は楽しみにしている。

 街の灯りがぽつぽつと視界を照らす中、濃く溶いた墨のなかに少しだけ水を足したようなどこか透明感のある夜空を、滑るように茶色い小鳥が空を渡り、最後に自らの羽根で速度を殺しながら私の頭上に降り立った。
 小さな友人にそっと手を伸ばし、その嘴が指先をつつくくすぐったさに、私はマフラーの下で微笑んだ。


============================
PL@一葉より:
 特に行く所もやる所も無く。
 やりたい事はまあやったかなーと思うので。

■ダイス
 23:38:58 一葉@カプリ 剣のかけら2つ 2d6 Dice:2D6[5,4]=9